パナソニック電工汐留ミュージアムにて 「アーツ・アンド・クラフツ≪イギリス・アメリカ≫」展を見る

 汐留ミュージアムはこぢんまりしているがさっと回るには良い展示会場ですな。ここでは以前ウィリアム・モリス展を見たけども、改めてアーツ・アンド・クラフツ展をやるというので見に行ったのだった。まあ、上野の都美術館でももうすぐアーツ&クラフツ展をやるというし、同じ流れの企画かもしれん。(ちょうど汐留が終わった後のタイミングで始まるし、同じ展示品が流れていくところもあるかも)
 今回の展示ではロセッティの絵あたりはなくて、モリス商会やその影響を受けた作品としての、壁紙とテキスタイル・印刷物(モリスが出版社もやってたそうな。書き出しが華やかな飾り字で飾られてて、活字や字間・行間・余白等の取り方にこだわりがあったそうな)・木工家具、刺繍、ランプ、食器、といったあたりを。またモリスらの影響が後年イギリスのみならずフランスやドイツやアメリカで広がったため、そうした工芸の展開を紹介する、という形になっていた。チャールズ・レニー・マッキントッシュの家具や、グラスゴー派、最終的にはフランク・ロイド・ライトの家具やインテリアやステンドグラスにまで到るんである。ここまで来るるとアーツ・アンド・クラフツというよりは既にアール・デコのデザインなわけだが、意外なところに流線形が描かれてたりしてね。
 手工芸へのこだわりについてはキャプションや映像資料など、色々なところで触れていたけども、価格に見合うように、ある程度量産のきくものでなきゃならないという一面もあったわけでデザインと加工過程に拘りつつも量産化可能な技術を模索してた、というあたりに見える。家内制手工業にしてもね。
 しかし唐草模様は多いですな。これはヌーヴォーあたりの浮世絵の影響もあるすっきりした空間処理と比べると、もっと密な連続模様に偏ってる様子なので、どちらかというと中世の彩色写本あたりのゴシック様式への回帰でもありましょう。(出版物のデザインに関しては、中世の写本を参考にしてるとかいう説明があったような)そういやあの唐草模様はケルトの縄目紋様に由来する物もあるとか。まあ19世紀の英国となると、一般の家庭の日用品デザインからは流石にいったん消えた意匠だろうから、古い美術品や建築・彫刻やなんかにモチーフをもらったんだろかね。
 そんなこんなで堪能するうちに、やっぱりまた閉館時間が迫っていたのだった。とりあえず図録を購入して帰る。