東京藝術大学大学美術館にてバウハウス・デッサウ展を見る

 いけねえ、もうじき終わっちゃうよ、というので慌てて見に行ったのだった。炎天下の休日中日の上野へ。
 バウハウスといえばドイツの前衛的な工芸・建築デザインの流れ、くらいの知識しかなかったのだけど、学校としてのバウハウスのコンセプトとか実際のカリキュラムの説明だとか、カンディンスキーやらクレーやなんかがこういう講義や実習をして、というあたりの情報は興味深かったし、展示作品もなかなか面白かったですよ。
 ただ、インテリアや建築としてもあまりにもアバンギャルドなので、これは実際住んで暮らす環境としてはどうよ、と言うモノも多々あり。シンプルなデザインの椅子なんかは、おやかっこいい、と思う物もたくさんあるのだけども、シンプルすぎてこれはいかにもみすぼらしくないかい、とか、固くて座り心地は悪そうだけども、と言う作品も多かったり。実際、シンプルな機能性を追求していた流れと、カンディンスキーらの抽象的な芸術表現の流れとはどんどん乖離していったとの説明もありましたしな。
 でも、一度こういう実践があって、実際に校舎や教授達の家なんかも造ってみた結果として、ようやく実際に居心地のいいデザインに落ち着く、という側面はあったんじゃないですかね。途中にあった小学校校舎の建築デザイン案なんか見ると、面白いけどこれ耐久性とか安全性とか全然考えてないんじゃ、という感じだったけど。
 そういえばちょっと前にどこかで、MUJIの家具やインテリアの特徴の説明として「バウハウスの傾向が見られる」と書いてあるのを見たことがあって、ああなるほど、と思ったのだけども。実際にここに並んでいた展示品と比べると、MUJIは良くも悪くもずっと普通(ポップな物もあるのは確かだけどね)。というか、ある程度普通じゃないと、一緒に暮らして生活に馴染むのは難しいんじゃないかな、と思ったり。
 そういう落ち着き処を捜してきた、というのが、この間6、70年ばかりの時間によって獲得されたものかもしれんな、などと考えたことだった。
 閉館時間近くまで見て回って、地下二階の収蔵品展示コーナーもちょろっと覗いて、午後6時近くになってもまだ暑い上野公園をへてへて歩いて戻ったのだった。