これってどうよ、神隠し真珠郎

 夜、テレビのチャンネルを回していたら、おや古谷一行。それに風体からし金田一シリーズと思しい。
 これは横溝者として見ておくべきかな、何をドラマ化したんだろ――と思ったら。それが、月曜ミステリー劇場神隠し真珠郎」であった。
 ――で、これは、何というか。ツッコミどころ多過ぎ。真珠郎って、こんな話だっけ?(全然違います;)
 ドラマの筋はというと。岡山のある地方の温泉の源泉の権利を握る資産家に、妾の子を含めて四人の息子達がいて、うち一人は三歳の時に神隠しに遭っている。これが真珠郎。その真珠郎が18年だかの歳月の後、美青年に成長して出没し、何故か兄たちを一人ずつ殺していく――らしい――。しかしこの一家の当主の弟一家には、やはり二十年近く前、流れ者に襲われて幼い息子二人が殺害され夫婦は半殺しの目に、という惨劇の過去が。生き残った老婆は「霧神様のたたりじゃ」と叫んで金田一を追い払おうとする――
 ええとね。「横溝正史ワールドの王道を行く」って、こういう話をドラマでやろうとするなら、どうしてわざわざ「真珠郎」を持ってくるかなと。元より原作は金田一耕助の登場する話じゃないし、資産家の遺産相続がどうのというはなしでもなし。何より、原作の特異なあの淫靡さ欠片もなし。――でもって、とってつけたように「真珠郎は生まれつき金髪で青い目」ってなに。そんな子供が数十年前の日本の田舎に産まれたら、絶対周囲から浮きまくって孤立すると思うけども。(まあ時代設定は明らかになってないけどさ。女性陣が尽く着物とかモンペ姿なのを見ると高度経済成長期に入った頃じゃないかと――それにしては変装用の□▽◆◇トレ▽ズは、って話が)
 ――ううむ。とりあえず、「それはそれ、これはこれ」((c)島本和彦)として原作を味わい直すかな。いや、「真珠郎」も以前、金田一耕助の話に仕立ててはいたけど、もうちょっと渋く原作を生かしたドラマ化があったんだけどね。仄暗く淫靡で陰惨な――それを思うと、今回はあんまりにも普通のドラマに見えますよう。横溝と銘打つ必要ないじゃん。しおしお。

真珠郎―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)

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真珠郎―名探偵・由利麟太郎 (あすかコミックスDX)

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