「墨攻」を見る
アカデミー賞も終わったことだし、という時期だが、ここでノミネート作品を見るんじゃなくそろそろ空いてきた頃だろうと「墨攻」を見に行く。実はちょっと、どうだろう、という感想も見聞きして迷っていたのだが、音楽が川井憲次だという情報を得て、俄然行く気になる。元よりあたくしもパトレイバーやら攻殻機動隊やらに執着している人間ですんで。
で、見た。
やあ、心配することなかったっす。ちゃんとしんどそうで悩み苦しんで埃まみれでよれよれの酷い話になってました。(←褒めてます。)だってばたばた死ぬし。まだ敵に捕まっても居ないのに、慌ててるうちに取り返しのつかないことになってるし。生き残っても猜疑心やら妬みやらにかられて味方同士で潰し合うし。善意の助け手は報われずにとばっちりで死ぬし、才能ある若者は折角の技能を疎まれて不具にされるし。
途中ちょっとだけ挟まれる、映画オリジナルのヒロインキャラとのまるで少年少女のようなほのかな思慕なんてのには、おいおい甘すぎじゃねーか、というところもあるのだけど。しかしこれもきっちり「酷い結末」に繋がるから、これはこれでよし。(←外道か私は?)
しかし行く前に、原作というか原原作の小説「墨攻」を入手していたのだが、背景と主人公の身分の設定だけは一応共通しているものの、これはほぼ別物になってるんですなあ。漫画を読んでないので、どこまでが漫画化の段階に施された脚色か分からないけど、原作は長編と呼ぶにはやや短いくらいの、あっさり淡々とさくさく進んで続編もない話なんである。
- 作者: 酒見賢一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1994/06/29
- メディア: 文庫
- 購入: 7人 クリック: 23回
- この商品を含むブログ (134件) を見る
しかし終盤まで、これでもかとどんでん返しが用意されているのにはちょっと驚いた。あの状況下からあの展開とは、と。細かく言えば「総司令官がこんなとこにいていいのか」とか「いくらなんでもああはならないでしょ;」というところもいくつもあるのだが、ドラマとしての勢いで見せてしまっている。
そしてエンディングテーマにおおたか静流の胡弓のような声が流れる頃にはすっかりじーんとしていたりするのだった。
まあこういうのは、楽しんだもの勝ちかもしれん。