エポックなかはらにて「米團治・花緑二人会」を聞く

 エポックなかはらとは、南武線武蔵中原駅至近にある、川崎市総合福祉センターである。川崎市中原区だけど、実は「川崎市」はあんまり表に出したくないんじゃないか中原区は――とは、米團治師匠のマクラネタ。

 演目は以下の通り。

(中入り)

 「稽古屋」以外はいずれも聞いた事のある根多でしたが、二度目三度目でもその度毎によござんす。花緑師匠の「初天神」の、きん坊のこまっしゃくれっぷりとか、顔くしゃくしゃにして泣くとことか、団子の蜜をべろんべろん舐め回すとことか(お腹が空くじゃないか!)、対して米團治師匠が、「くしゃみ講釈」で「小伝馬町よりひきだーされー ぼえーー!」と「八百屋お七」を繰り返しやる下りとか、講釈士が大阪夏の陣(だよね?;)を滔々と語る下りとか、繰り返し聞いても調子良くってよござんす。
 今回は中入後の出で、花緑師匠はムーンウォーク米團治師匠は踊りで手ぬぐい投げを披露するおまけつき。前半の高座で米團治師匠が「花緑君はムーンウォークをやるそうです」とか言ってから、中入の間に囃子方さんと綿密な打ち合わせをしたんだそうで。
 で、花緑師匠に拠ると、このムーンウォーク芸は、「落語より自信がある。落語はすべることもあるけどこれはすべらない。中学の頃に覚えたから。ザ・ベストテンでトシちゃん(若いものは知らんかのう、往年のあいどるであった田原俊彦氏じゃ、ふぉっふぉっふぉ)がやってたのを見て、自宅にあったおじいちゃんの道場の鏡の前で三週間練習した」んだそうで。米團治師匠は普通に出てくる予定だったのが、これだけムーンウォークを披露されると何かやらなきゃならない気がして、踊りも入れてみたんだそうな。この時のお囃子が元々は歌舞伎の――道成寺だったか?――場面転換の間の曲で、この曲が流れている間に坊主の扮装の役者達が並んで客席におひねり状にした手ぬぐいを撒くのだ、とのこと。本来はたくさん撒くものだけど、今回は1つだけ、「小米朝」時代の千社札入り、とのことでした。むう、受け止めた方お一人には随分なプレゼントですな、うらやましいことで。