サンシャイン劇場にて小米朝ファイナル公演 『桂小米朝と柳家花緑』二人会を見る

松竹落語
米團治襲名直前!
小米朝ファイナル公演

 関西落語の皆様にはばちあたりと言われるかもしれんが、小米朝にはほとんど関心がなく、花緑が出るというのでチケット取ってみたのだった。(それとその、安かったんです。)
 考えてみたら伊達に「小=米朝」を名乗ってきたわけもなく、しかも改名/襲名前の関東最終公演というんで、正式な襲名披露などとは勿論違うのだが、思いの外気合いが入ったイベントになっていたのだった。
 ――と、思ったのは、サンシャイン劇場のロビーが花で埋め尽くされていたためだったのだが、実はこの花はほぼ全てが、この二人会の直前まで同じ劇場で行われていた舞台「罠」(出演:池畑慎之介川崎麻世、宮川浩、田口守、杜けあき 他)のためだったのだった。17時まで演劇をやっていたホールに、18時半から客を入れて落語をやってるんである。大道具などは片付けもできないので暗幕で隠し、その前に金屏風を立てて高座を置いてるんである。
 わあ。なんて合理的な活用。(いや、裏方さんはたまらんかもしれんが;)
 いや、こういうブッキングってこの業界ではわりとあるんでしょか? オペラとオーケストラ公演とかでなきゃ大丈夫なんでしょか?
 閑話休題
 さて落語はというと、最初に桂雀喜が出て前座を務め、その後に小米朝花緑が出て中入、その後花緑小米朝トークを挟んで再度花緑小米朝、という段取りであった。演目は以下の通り。

中入

 雀喜はマクラで、自己紹介として、大師匠の米朝に憶えて貰えない、という自虐ネタを。雀喜は、米朝の弟子である故・枝雀の弟子の雀三郎に弟子入りした、いわば曾孫弟子だそうで、それで憶えてもらえないのか、と思っていたが、実は弟弟子の雀吾郎や雀太は憶えて貰ってるようなのに、とのこと。しかも雀喜は、当初は米朝師匠のところに弟子入りを申し込んで、もう年で直弟子は取らないから雀三郎のとこに、と言われたという経緯があったというのに、全く憶えられてないとのこと。で、この話の間に、名前をつけてくれたという故・枝雀師匠とか、米朝師匠とか、物真似をしてみせるのだった。やあ枝雀なんぞ懐かしかったですなあ。でも今時の若いモンはしらんかなあ。私はDVDを十巻ぶんほど持っているのですよ。ドグラ・マグラも買うべきか。
 しかし雀喜の話は、拙いというほどでもないんだけど、どうも自虐っぷりや話の微妙な引っ張りようがすっきりしない感じ。上方のノリに私がついてってないということかなあ、と思いながら聞いていた。
 が。替わって小米朝師匠が出てきてみるというと。わなんか調子いいですよ。父米朝の高弟であるざこばが持ってきた襲名の話(最初は「米朝」に変えなはれ、という話だったらしい;)から、「米團治」という名前の先代の話など。そこへ持ってきて、「親子茶屋」は、芸者遊びに入れあげる若旦那とそれを叱る大旦那、しかしその大旦那も実は、という親子の話なんである。わあ関西弁とか上方ノリとか全然関係なく調子良いじゃないよ、と笑わされることしきり。いや、上方とかの境を越えて小米朝師匠が巧いだけかもしれないが。
 その後、さらに替わって花緑師匠登場。今回は小米朝襲名直前、ということを受けて、マクラのネタは自然と小米朝との交流や、身内の後を継ぐようにして落語の道に入る、という共通の背景について。花緑師匠によると、小米朝師匠は年はずっと上なのだが、同じ二世(か?)の落語家ということで親しくさせてもらってる、とのこと。で、祖父の故小さん師匠の話になるのだが、「こんな僕もおじいさんから引き継いだものがある」とのこと。その一つが、「永谷園の味噌汁のCM」。(参考)この五月だかにCMの話が来たのだそうだが、たまたまCMの仕事の連絡を受ける直前に、夢に故小さん師匠が現れたのだそうな。夢の中で、二人会をやろう、演題を出して見ろ、と言われ、ホワイトボードかなんかに2つほど書き出してみるというと、小さん師匠は嬉しそうに笑っていた、という。――で、永谷園の仕事が来て、撮影をして、出来上がってみるというと、故小さん師匠の映像が途中に合成されている。あ、これは二人会じゃないか、そうかあの夢はおじいさんのお告げだったんだ――というので、商品名にひっかけて。あることを。
 ええまあ。「二人会の夢のお告げ」なるお話は、長い長い駄洒落の前振りだったらしいですぞ。そうかあ、このくらいしないとだめなんだなあ、と感心することしきり。(そうか?;)
 でもって演目は「粗忽長屋」なんである。ボケとツッコミじゃなくて、両方ボケな話。まめなボケとぐうたらなボケとどっちがましか、という。やあ、花緑師匠はボケ役が巧いですな。童顔の元々面白い顔を惜しげもなくボケに崩しておる。<褒めてます、念のため。しかし惜しいことに「粗忽長屋」はものを食べるとこが入ってないんですな。この方は食べる動作がことのほか巧いと思ってるんですが。
 ――と、思ったら、トークのあとの出では「初天神」をやって、存分にお行儀悪くお団子の蜜を舐め回してくれました。わははははは。なんかちょっとお腹空いて来ちゃいましたよ。