「春風亭小朝独演会」を見る

 大井町のきゅりあん大ホールにて。
 独演会と言いながらも前座くらいは置くんだろな、と思っていたら、真打昇進・「木久蔵」襲名を控えているきくおが出てきた。更に休憩後には五明樓玉の輔が出てきて「続けて小朝は出しません。世の中そんなに甘くないってことで」とか行っていた。(知らなかったんですがこの方小朝の直弟子なんですな)
 演目は、帰りに確認して出なかったんで定かではないのだけど、たぶんこんなん。ほとんど新作。

(休憩)

  • 五明樓玉の輔 「マキシム・ド・呑兵衛」(綾瀬で小汚く儲からない居酒屋を営む老夫婦。孫娘が「一流のサービスを見せてあげるから参考にして」と祖母を銀座マキシム・ド・パリに連れて行くが、それを「参考にして」変えた店は、という話)
  • 春風亭小朝 「浜野矩随」これだけ古典。

 きくおは枕のあたりが今一硬い感じであったけども、噺に入ったら乗ってきていた様子。
 小朝の新作落語2題は、「ヴィンテージ・オブ・1985」の冒頭、「あの素晴らしい愛をもう一度」が流れるのみの暗転を挟んでたて続けに。ちょっと調べてみたら、「茂造の恋」は玉の輔がやったりもしてるんですなあ。小朝が書いたのではないのか、それとも弟子にもやらせてみているのか。これは、スケベ爺さんにも愛嬌を見せて、セクハラに困らされる看護師嬢も優しげに演じられる小朝の方が嵌るでしょう。「ヴィンテージ・オブ・1985」は「林真須美」なんてえ名前が出るあたりからして、しばらく前に書かれたものと思しい。時事ネタを盛り込むならもう少し新しいのをと思わないではないけど、ここで同様のブラックな笑いを与えられる人物名ってそうそうないしねえ。
 休憩を挟んで、玉の輔。この方は初めて見たのだが(テレビでも見てるかもしらんが、名前を意識したことがなかったのだろう)随分調子が良くて面白かった。そらっとぼけてすかしている感じがよろしい。枕では、前に出たきくおをちょっといじっていた。玉川大学なんてえぼっちゃん大学出てるんです、とか、誕生祝いにBMなんか買ってもらってるんです、その親はというとベンツに乗ってるんだけど、運転は服にも髪型に構わない弟子にさせてて、周りの者がこれを称して「ネグセデスベンツ」、とか。噺に入ると、小汚くまことにいい加減そうなばあさまの演じ具合がなかなか。
 小朝の「浜野矩随」は先日に続いて二度目だけど、先日見たときと同様、枕には歌舞伎と落語の比較の話を持ってきていた。が、今回は落語の側の二世の例として、前に出たきくお・木久蔵親子を出してきてちょっといじっていた。で本題は、相変わらず巧いのだった。筋を知ってても、矩随が泣くところではじわじわ来てしまうしね。
 ところで、浜野矩随のことを少し調べたら、元の講談や、落語に書かれた当初からすると、色々とマイナーチェンジがあったらしい。例えば観音像の値段を小朝は「二十両で」と言っているが、元は五十両だったらしい、とか、母の死に方が違う、とか。私もこれまで聞きながら、名人の妻とはいえ職人のおかみさんがこれはどうよ、と思っていたのだけど、元々は違ったらしい。その方が絵になるというんで変えたんだろうか。これは武家の妻女の作法だと思うのだが。

 と、いうことでこの後、初めて来た大井町駅前をうろうろし、100円ショップで菓子とか雑貨とか、みょーなプリントのTシャツ2枚ほどを、ついうっかり購入してしまう。ほんとはちょっと都内の美術館など寄るか、とも考えていたのだが、移動するうちに買い物荷物が多くなったので取りやめ。
 まあ、暑かったしね〜;