ルテアトル銀座にて第28回読売GINZA落語会を聞く

 そんな荒天ではあったが、退勤後に京橋まで出掛けて行ったのだった。談春目当てにチケットを取ったんである。幸い終演後外に出たら、雨はほぼ止んでいたのだが。
 驚いたことにこの落語会、入るとき渡されたプログラムに演者とともに演目まで書いてある。そういうことも可能なのか、と一瞬思うも、考えてみれば落語以外の業界でなら不思議でもないことではある。
 そんなわけでプログラム通りに進行。(誰ぞ全然違うのをやらんか、と期待しないではなかったけど)演者と演目は以下の通り。

お仲入

 談春以外の噺家さん達も大変面白かったですよ。喬太郎新作落語はまたチケット取って聞きに行ってもいいかな、と思うくらい。いや、斉藤由貴がミス・マガジンだったとかスケバン刑事とか、会場のどれだけの客にわかるんだ、というぶっ飛びのネタもありましたけども。
 トリが談春師匠の妾馬。十八番ですな。私も何度目だ談春師匠の妾馬、てくらい聞いてますが、不思議なことに妾馬同様に得意とされる紺屋高尾は、一度も聞いたことがないんでした。どういう巡り合わせであろうか;

 ところでこの時の照明。前の一席をやった扇遊師匠の間は、客電がほぼついたままのような明るさだったんですが、談春師匠の出囃子が鳴りだしたらすーっと暗くなって、ほとんど真っ暗に。
 照明さんに特に指示してるんだと思いますが、よっぽど嫌なんでしょうかね、明るい客席; いや、聞きながらネタを一々メモする客がいるらしいんですが。
 今回のマクラは、今日の台風と昨夜の選挙結果を受けて、「なんかあると思ってたんです、天変地異が」とか「でも台風がこの程度で通り過ぎちゃったってことは、あとはインフルエンザに期待をするしかない」とか仰る。
 しかし今後インフルエンザの流行が酷くなってくるというと、おそらく不特定多数を集めた集会は禁止され、落語会は地下へ潜ることになる。個人宅の地下室(や何も地下室である必要はないと思うけど;)にほんとに落語が好きな人達だけを集めて、噺家もそこはやりたくて仕方ないところだから、客と膝付き合わせて――しかしそこへ官憲の手入れが入る。「誰が密告したんだ」「誰もしゃべってない!」「円楽党からの密告だ」「なんで密告なんかするんだ!」「だって悔しいんだもん」――等等。
 更にマクラは続く。ちょっと話変わって、年齢の話。落語界の兄弟弟子の間や、毎日顔を合わせている夫婦では、お互い年を取った感じないのでずっと出会った頃の年の感じのまま。しかしこれは子供がいないせいかもしれない、という。例えば同窓会で再会した、学生時代はモテモテだった運動部のキャプテンなどが、見る影もなく老け込んでいたりする。話題は子供と仕事のこと、ローンの苦労のことだったりするので、やはり子供の成長の節目に自分の年を実感してしまうのだろう、という。
 しかして、子供がいなくても、年を感じる機会はあった。それは、親の老け込みようを目の当たりにするとき。――と、いう流れで、妾馬に入ったのだった。
 うむ、師匠調子良かったんじゃないですかね。後半の「稲穂かな」の後あたりはずっと会場静まり返ってましたし。良いものを見せていただきました。