新国立劇場にてローラン・プティの「コッペリア」を見る

 お誘いがあって、みんなでバレエ「コッペリア」を見た後に宴会、という企画に出かける。流石にこのところ散財してるしなー、バレエはどうかなー、と思っていたら、新国立劇場は当日出る4階あたりの安い安い(バレエにしては、だが)Z席というのがあるのだった。朝方これをチケットぴあでゲットして、午後のマチネを目指して移動。
 が、新宿に着いた頃には大粒の雨が降り出していたのだった。んでつい初台なら新宿から歩けばいいよね、などと思っていたら、雨の中を歩くにはえらい遠いのだった。しかも地上を移動すると、劇場らしく見える建物がやたら多い。つい間違えてNTTに入りそうになったり、オペラシティに入って行っちゃったりして、散々に階段を上がり下りする。きい。
 それはともかく「コッペリア」。テレビ等で見たことがあって筋は知っていたのだが、ローラン・プティ版は色々と独自の改変がある。何より大きいのが、コッペリウス博士がイケメンでダンディな壮年男性で、2幕ではお人形を相手に優雅なワルツを披露したりするんである。またこの博士は実は、奔放で兵隊さんたちにもモテモテなコギャル(としか思われんのですわ、この演出では特に)のスワニルダ嬢に片恋していて、お人形のオランピアコッペリア嬢もスワニルダを模して作ってある、という。で、最後の結婚式の場面では、所在なげに傷心の博士が、ドレスを奪われたむき出しのままのお人形を手に現れて、とてもとても可哀想な様子になっている。
 むむう。コギャル恐るべし。博士カワイソス。
 としか思えんのは、私がお人形とお人形愛な人々の方に感情移入してしまうせいかしら。博士の部屋の場面でも、この版では各国のお人形は登場せず、代わりに戸棚に球体関節人形の頭や手足やトルソがあって、時々ライトとともにがたがた動いてみせたりするし。いやでも、お人形者としては、生身の女の子を見て「スワニルダたん萌え」(<と思われる、というのが同行者たちの一致した見解であった)とかいうのは邪道ではあるまいか、とも。人形者なら人形者らしく、お人形に萌えているべきなのであって。それならオランピアとスワニルダとを取り違えたりしてはいかんのではないだろうか。
 しかしともあれ、博士が若い二人の間にそう言う形で入り込むあたりがこのドラマのキモであるのはよくわかる。お陰でエロさもいや増しているように感じたし。(それともあれは、オランピアコッペリア人形の黒コスチュームのせいなのかなあ。同じ女性ダンサーが踊っても、ピンク/白のスワニルダより黒のオランピア衣装の方がエロティックに見えるし)博士がキャラクターとしてスワニルダに向かい合った結果、相対的にフランツの比重がより軽くはなるけれども、踊りではフランツにもかなり見せ場があったし。
 そういうわけで、大変楽しんでみたことであった。なんかこの「コッペリア」というお題は、まだまだ色々いじれそうな気がしますよ。