「天使と悪魔」を見る

 どうなんだろう、と思いつつ世間の評判を見ていたら、「「ダ・ヴィンチ・コード」よりずっといい」とか「原作よりいい」とかいう声が聞こえて来たので見ておくことにしたのだった。それにヴァチカンだし。ローマだし。
 ああいや、ほんと、面白いじゃないですか。「敵は『イルミナティ』ってあるかよ!!」とツッコミどころは満載だけども。しかしそれにもちゃんと最後の方でネタの回収があるし。最終的には「科学も宗教も両方なきゃだめなんだよ」というところに落として、ヴァチカンもそれは分かってるのよ、としてるあたりは大変良心的。(前作で悪の組織っぽく描き過ぎちゃったからイメージのリカバリを図ったのかなあ;)その辺の冷静な配慮に免じて、「反物質ってそーいうもんじゃないでしょー!!」という地団駄は納めてやろう。うむ。<えらそう;
 まあ物語自体はサスペンスのいくつかの定石に従ってると思うのだけど。それぞれ1時間のタイムリミットが切られてることといい、「だからどーしてそこで一人きりになるのよラングドン教授!」とか「うああ、どうして折角連れてった警察がこんなにあっさり!」とか「警察を呼び戻さないでヴィットリアしか連れてかないってなんで!」とかいう「24」的な展開も多いし。
 ところでこの映画の中では、「イルミナティ」関連にも関わらず「錬金術」という用語が全く出て来なかったなあ。地水火風の四大元素なんて、科学の、というより錬金術の基本概念なんだけども。(まあ錬金術と直接関係しないアリストテレスまで遡るそうですけどね)
 多分、この話の流れだと、宗教の中枢であるヴァチカンと対立する概念、として現代なら「科学」を持って来なきゃならないから、イルミナティも「錬金術」でも「悪魔崇拝」のでもなく、犠牲者を「科学」の祭壇に捧げる団体、とされちゃったんだとは思うけど。
 余計な予備知識のある者としては引っかかりのあることだなあ。だいたい「イルミナティ」という名称自体がヴァイスハウプト以降だと思うんで、ガリレオの時代には錬金術の研究団体というくらいでしかなかったと思うんだけど。(薔薇十字、は名乗ってたかもしれん)
 しかしどうやら、原作はこの映画以上にトンデモ要素満載らしいのだった。読むべきかどうか迷うけども、一応心覚えリンク。

天使と悪魔 (上) (角川文庫)

天使と悪魔 (上) (角川文庫)

天使と悪魔 (中) (角川文庫)
天使と悪魔 (下) (角川文庫)
天使と悪魔(中) (角川文庫) [ ダン・ブラウン ]
天使と悪魔(下) (角川文庫) [ ダン・ブラウン ]
 文庫本3冊にも渡る内容じゃないような気もするけどなあ。それだけ映画が手際よくまとめてあったってことか。
 ついでに、イルミナティについて参考文献らしきものが出た↓ので買ってみた。
[rakuten:book:13124544:detail]
 いや、一般向けにまとめ過ぎだし、実態として映画「天使と悪魔」宣伝本か、というような造りではあったけども、まあ錬金術or悪魔崇拝等と教会の対立史エピソードを紹介しているので、参考にはなるかと。(ただし陰謀論については話半分の方向で; この手の本の常道として、あんまりにも自信たっぷりに言い切ってあるのでいくらなんでもフカシだろうとわかるけども;)
 ただその、安いと思ったら本のつくりは完全に雑誌だし、間にアダルト広告ページが多々入ってるのがなんとも;