横浜関内ホール大ホールにて「春風亭昇太独演会inYOKOHAMA」を聞く

 平日夜だが、チケットが取れたので行くのだった。夜7時の開演に間に合うかどうか怪しいところだったが、なんとか開演のブザーが鳴り終わる頃までに客席に入れたのだった。
 「独演会」と銘打ってはいるものの、前座等も合わせて以下こんな感じ。

  • 口上(?) 春風亭昇太 口上、と言っていいのか。私服のシャツにジーンズにハンチング、といういでたちで出て来てトーク小倉城というところに行って、昭和三十年代に派手目に変な普請をしてしまったところを見て「このウソ城が〜!」とか言っていたら足をくじき、その後鹿児島だかで笑点の収録のため移動するも、収録前日夜に接待等受けている間に正座が辛いくらい腫れ上がり、病院できつい注射を打ってもらったが、痛い筈の注射が痛くないくらい腫れがひどかった、等等の話。
  • 前座 春風亭昇吉「雑俳」 昇太師匠のお弟子さん。(ちょろっと調べたら東大出らしい。わあ、親は泣いているぞ;花緑師匠の言うところの正しい落語家の道ではありますが)「雑俳」といえば、「牛ほめ」とともに昇太師匠が柳昇師匠に教えてもらった古典落語二席のうちの一つですが、昇吉君は師匠にも大師匠にも似ず滑舌の良い良いお声でありました。八っつぁんとご隠居の声も微妙に変えてるし(途中ちょっととっちらかってましたが)、終盤の「手てと手と手と」から「トッテテテッテッテー」への流れも軽妙だし、まだ前座らしいですが、結構いいところ行くんじゃないでしょうかね。
  • 春風亭昇太権助魚」(生着替えを挟んで)「ストレスの海」 まくらには以前何度か聞いたような、紅白歌合戦の「森進一の話」。時事ネタだったし四月になってもやってるとは思わなかったんだけども、なんだか人間離れ具合が徐々にグレードアップしているような。(「おまえは悪魔か」とも;)あと、WBCが終わったばかりなんで、丁度決勝戦の日に静岡のどこだかで落語会をやっていて、楽屋で決着がついたのを聞いてから高座に上がり、「皆様まだ結果は知らない訳ですね。でもここで言うのも――あ、知りたいですか? 知りたい?」とかじらして勿体つけて話したこと、など。「ダルビッシュかっこいいですよねえ、球もビャーっと速いし! このダルビッシュが――打たれたんです」と言ってはずーんと落ち込ませ、しかしまた「あと日本野球と言えばイチロー! でもイチローずっと不調でしたしね。イチローがこの場面で出て来て――打ったんです!」と言ってやんやの喝采を浴び――でも喜ばれてるのは昇太師匠の話じゃなくって野球。しまいには涙まで流して喜ぶおばさん達を見て、「あんたこれまで野球なんか応援したことなかったろうに!」とか言う。――で、権助魚もストレスの海も面白うございましたよ。当初は浅葱の着物なんかに紫の羽織なんぞお召しで、これを権助魚が終わったところでぴゃーっと脱いで(勿論下には襦袢をお召しだが。や、なんか朱赤系のきれいなまだらの鮮やかな派手派手しい襦袢でございました;)丸めて舞台袖に放って、投げ返されたオレンジ色の着物に着替えたんでありました。袖山に沿って白い3本線入ってて、背中には「4」て番号入ってんの。ジャージ?; 以前白鳥師匠も似たようなのお召しでしたが。

(仲入り) ロビーにてDVDやCDなぞ販売しているのを横目で眺めつつ、ハンドタオルなぞ購入する。茶色で海月紋の柄が入ってるの。

  • 三増紋之助 江戸曲独楽 1つ2つ芸を見せた後で、客席前列からお手伝いに一人上がってもらう。これが、背広姿の年配の紳士だったのだが、妙にノリが良いのだった。「下のお名前は」「あ、薫と申します」「薫さん――じゃ、カオちゃんで」とか言われても笑って応対する。「じゃ芸に入る前に、『モンちゃんと!』『カオちゃんの!』と言って、何かお好きな決めポーズを」とか言われると、すかさず昔懐かしい「シェー!」なんかやってくれちゃう。あの方はほんとに仕込みじゃなかったんでしょうか。いや、さくらとまでは思わないけど、事前に「こういう感じで呼びますんで」とか話をされていた会場関係者かなんかではなかったろうか、と。そんなことを思うくらいのノリの良さではあったんですわ。
  • 春風亭昇太茶の湯」 まくらはたしか、志の輔師匠(仲良しらしい)に「しょうちゃんゴルフ行こうよー」などと言われ(ちゃんと志の輔師の塩から声の真似をする)嫌々ゴルフのお供をしたり、ゴルフセットを買いに行ったりしたという話。地方巡業で弟子がお世話になったというので、恩もあるので大人しく連れて行かれるというと、高いセットを買わされるのに自分は電話かなんかしてたりして、店の方と二人で決めるような流れに、という。さて「茶の湯」はというと、これもよく演じられる古典落語だけども、昇太師匠の手にかかると、ご隠居と小僧さんのどたばたなやりとりが強調されていて楽しい。特に「茶の湯」を口に含んで悶絶するあたりとか。や、茶の湯ってこんな派手な噺だったかいな、と思うようなスペクタクルでございました。