「リリィ、はちみつ色の秘密」を見る

 映画の日なので映画。日中までは私の周辺でも評判の「ウォッチメン」を見る気でいたのだけども、ちょっと気になっていたこの映画がだいぶ上演館も上演回数も減っている様子なので早めに見た方がよし、と踏んでこちらへ。
 この映画は予告を見て気になってたのだった。米国のベストセラー小説の映画化だということだけども、それはともかく主演ダコタ・ファニングだし、競演クィーン・ラティファだとかいってるし。派手なスペクタクルではない感じだけども、それを言ってると結局DVDが出てもいつまでも見なかったりするので、見られるうちに見ておくのだった。
 さて、映画。
 メインのストーリーとしては、幼い頃母を亡くした記憶が心の傷になっている14歳の少女リリィが、母のことを知るために家出をし、生前の母とつながりがあるらしき養蜂家の黒人姉妹と暮らすうちに変化していく、というものなのだけども、舞台は1964年のサウスカロライナー州なので、背景として公民権法の成立と、それでもまだ根強く残る有色人種差別がある。冷淡で暴力的な父と暮らすリリィの支えになるのはメイドのロザリンだけなのだが、黒人であるロザリンと一緒に歩くことで街の白人達からは厳しい目を向けられる。しかし家出して母が写真に残した書き込みを目当てに着いた街で、リリィとロザリンは、黒人でありながら教養もあり事業を成功させて自立している、オーガストらボートライト姉妹に出会う。
 ダコタ・ファニングのリリィもいいのだけど、それ以上に、落ち着いて堂々たるオーガストを演じるクィーン・ラティファとその妹でクール・ビューティの音楽教師ジューンを演じるアリシア・キーズがよろしい。まあクィーン・ラティファが演じるのはだいたいいつも堂々たるおっかさんタイプなんだけども、今回は、このひとこんなに知的なタイプだっけ、と思うような落ち着きっぷりである。当初リリィの最も身近な黒人としてはロザリン(ジェニファー・ハドソン。「ドリームガールズ」以来だろか)が居る訳だが、迫害に対する強い反骨は示すが、まだ若いらしく不平や苛立ちも隠さず、自分が「ばかな黒人」と呼ばれそれを否定しきれないでいるのと、オーガストらの落ち着きは対照的に見える。ただしここに、ボートライト姉妹にも陽気だが不安定な末妹メイ(ソフィー・オコネドー)の存在があって、メイとロザリンが仲良くなり、ボートライト家での生活に馴染んでいく過程を経て、ロザリンもやがてオーガストらと同様の落ち着きを身につけるようになる。
 ――と、見て行くと、確かにリリィが父母の過去のいきさつを知って、それを受け入れていく過程もいいのだが、それ以上にバイプレーヤー達の物語が光る物語だと思う。ストーリーラインはいわばメロドラマの正道を外れないので、さほど驚きの展開はないのだが、定番の流れに沿った感情の動きをエピソードやイメージの連なりで丁寧に描いているという感じ。
 ところでリリィの父親であるT・レイはポール・ベタニーが演じていたのだが、実は私、結構終盤近くになるまでポール・ベタニーだということに気がつかなかったのだった。なぜだろう。今回は全裸になってないせいかしら。いやいやいや、なんだかこの映画では、眉あたりの暗い厳しい顔つきがあんまり使われてなかったような気がするのだが。
 そういや眉といえば、ダコタ・ファニング安達祐実によーく似てますな。いや似てるとはいろんなところで言われてることだけども、特に眉間の縦皺の表情とかが。

[rakuten:book:13213127:detail]