「ジェネラル・ルージュの凱旋」を見る

 折角TOHOシネマズの割引日だし、と思って移動しながらヴァーさんの粋な企みで調べていたのだが、どうも都合の良い時間の上映に間に合わない。(1時間前にはネット予約は締め切っちゃうのだ。)まあ行けばあるだろ、と思って20分前くらいに窓口に行ったらもう売り切れてるし。
 なんか前作が今一だった(といっても邦画にしてはヒットした方らしい。先日地上波TVでもやってたのでちょろちょろと見たけども)せいで盛り上がりに欠けるかと思っていたら、意外にも前作以上に好評らしいのだった。
 そんなわけで夜遅い回に変えて見て来たのだった。週末の割引日とはいえ、深夜近くなってもシネコンに人がぞろぞろいる状況ってちょっとすごい。いや、「ジェネラル・ルージュ」のためだけにいるわけじゃなかろうけど。
 そういうわけで映画。
 や、堪能しましたよ。いいじゃないですか。
 以下ネタバレを含むので畳みます。
 サスペンスや謎解き部分は思ったほど複雑にはしてないんだけども、娯楽大作としてはちょうどいい感じですよ。原作では人死にはないはずですが、あれくらいはないと映画としてはもたなかったんじゃないかと。査問会のやりとりだけをメインにサスペンスを維持するのは辛いでしょう。
 「喜怒哀楽を笑顔で表現する男」堺雅人が笑顔で悪党面をやってます。この方比較的小柄で細身の筈なんだが、今回は偉そうに大きそうに見える。笑っててもチュッパチャップス銜えてても上目遣いとか怖い。肉体派の山本太郎が、その部下の丈夫そうで生真面目なお医者をやってるのだが、どう見てもこっちのが強そうながたいなのに山本太郎が気の毒に見える。初登場の、スピーカーから声だけで「受けろ」とか言ってくるのも怖い。部屋に行くと監視カメラでそっちこっち一方的に見てやがるし。
 まあサスペンスとハードボイルドの部分を堺雅人はじめとするERメンバーが担っているので、自然と主人公コンビはコメディ・リリーフ的になる。阿部寛演じるところの白鳥のはじけっぷりは、見れば見るほど「TRICK」の上田教授に見えてくる。「どーんとこい!」とか言い出さないのが不思議なくらい。
 と、思い返してみれば、主人公を演じる竹内結子のシーンはほぼコメディと言ってよいような。いや、タンクローリー事故で野戦病院化して以降はそうでもないんだけど。
 折角だから、良きも悪しきも取り混ぜて、つらつら作中の気になったところを挙げてみる。

  • リハビリ室の前を通ったら患者に悲鳴を上げさせてるジャイアント馬場に良く似た職員が――と思ったら、坊主頭にした嶋田久作(後日訂正。間違いでした;)長江英和、という事実に気がついて一人高笑い。この人こんな妙な役ばっかりや。(まあ長江英和氏も妙な役多いですが;)妙なものを見せてくれるな、と思っていたら、後で重要なところで再登場した。いいけど、あの人よくあんな暇ありましたね。下がしっちゃかめっちゃかな時だし、腕っ節の強そうな職員は駆り出されるんじゃないのだろうか。
  • 後半、野戦病院化してからが最大の盛り上がりを見せる訳だが、考えてみればあのタイミングは出来過ぎではなかろうか。いや、娯楽作品でそういうこと言っちゃ無粋なんだろうなと思いつつ、つい。
  • 堺雅人にジェネラル速水をやらせたのは、「ルージュ」のあれが似合ってお笑いにならないで済む容貌でなきゃならんからかなあ。原作でも看護士達の憧れという好男子だけども、これを実写でやるとなると、お笑いになったり気持ち悪さのみが先に立ったりしない容貌の男性って相当難しいんじゃ。
  • しかし「チーム・バチスタ」のあの人と、今回はあの人と、この病院にはどれだけ倫理観(そも人間性)に問題のある職員がいるのや; いいのかそんな病院で; あれだな、学園ものでミステリ連載とか連ドラとかやると、探偵役の所属する団体(学校とかクラブとか)には毎回一人以上の殺人犯、良くても窃盗犯や横領犯、恐喝犯などが現れることになっちゃうので、こんなに犯罪者のいるとこなんて大丈夫か、と思っちゃうものだけども。
  • 事務長はあんな陰謀に加担していたくせに、あんなに簡単に骨抜きになってくれていいのだろうか。いや原作でもそうではあったはずだけど(原作ではほんとに救急を削ろうとしてた訳ではなくて色々と忸怩たる物はあったけど、という話になってたか)非常事態の混乱と妻子(原作では妻のみ)が助かったありがたみで、ということだろうか。――でも事務長が味方になってくれたとしても、ドクターヘリを飛ばせるほどの予算はそうそう捻り出せないと思うのよ; どんな裏技だあれは;
  • 最後の方のジェネラル退場のシーンで、ジェネラルの車のタイヤ周りに枯れ草が伸びてるのを見ておお!と思ったのだが、考えてみれば人々(特に田口)の服装を見ても季節は冬だと思うし、秋頃からずっと伸びっぱなしで草むしりも入らなかった、とまでいうのはちょっと作り過ぎじゃなかろうか。
  • 同じく最後の、ジェネラルと花房師長のシーンで、この人たちははっきりとは何も約束してなかったんか、と思ったらさすがにできすぎじゃなかろうかと思った; いや原作通りだし(ただし台詞は違うんで、原作では何らかの約束くらいはあったんじゃないかと)、そのくらい期待してもよさそうな関係だったんだろうけど、それにしても、こんないきなりの展開で一緒に行けるんか、と。
  • ともあれ見終わって感じたのは、お医者って、大変なんだね……と。まあこれまでもERとかそれを模した日本の医療系の連ドラとかで扱われてるテーマではあるんだろうけども。一ヶ月帰ってないって、なあ。そんなもんと漏れ聞いたことはあるけど、それだとどう考えてもまともな家庭生活はできんではありませんか。
  • あ、エンディングの後の方で流れたEXILEの主題歌は、ほんとにどうでもよかったね。いや悪い歌じゃないんだけど、浮きまくってました。誰だこんなの導入したの。

 折角だから原作本↓を紹介しとく。

ジェネラル・ルージュの凱旋(上) (宝島社文庫)

ジェネラル・ルージュの凱旋(上) (宝島社文庫)

ジェネラル・ルージュの凱旋(下) (宝島社文庫)

ジェネラル・ルージュの凱旋(下) (宝島社文庫)

 それと、できればこの話の前日談、「10年前のデパート火災」の話であるこれ↓もドラマ化して欲しいものですな。今回の作中にも回想シーンがちょっとだけ出てくるけど、折角だからちゃんとやって欲しいなと。
ジェネラル・ルージュの伝説 海堂尊ワールドのすべて

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ジェネラル・ルージュの凱旋 [DVD]

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