「少年メリケンサック」を見る

 なんとなく気になったので、まだかかっているようだったし映画の日なのでこれを。
 ええ。いやもう。おばかで下品で間抜けで、それはもうすがすがしいほどでありましたよ。<褒めてます。
 以下ネタバレを含むので畳みます。
 宮崎あおい主演、宮藤官九郎監督・脚本ということで話題になってたけども、クドカン脚本には吸引力も反発力もあるようだからあんまり売りにならないかもしれない。私もクドカン作品に心惹かれる方ではないのだが、これは「ああなんかちょっとやかましい」と思いつつも、笑わされてしまったから良しとしようかと。
 まあ「篤姫」であれだけ名を上げた宮崎あおいがこんなおばかな役をやるとは普通思わんでしょう。中年パンクバンドの下品で勝手で間抜けな困った面々に引きずられてマネージャーとしてライブツアーに出るはめになる、という役所だけども、主人公本人がものすごくおばかで間抜けで流されやすいし。(特に恋人とのバカップルぶりが)んでここに佐藤浩市が、落ちぶれて下品で口先だけは偉そうな元パンクロッカーのおじさん(五十代)で出てくるわけですな。序盤っからふけまみれ垢まみれでのんだくれてゲロは吐くという。だいたい佐藤浩市が「チ××でかいんかー!」(一応伏せ字;)とか連呼する役なんて思いますかい、これまでのキャリアで; その下品さしょーもなさたるや、後に出てくる木村祐一演じる弟がものすごい柔和な常識人に見えるくらい。(いや、初対面で牛糞投げ付けたりはしてますけどさ。再登場してからはだいたい一貫して主人公には優しいし。)
 しかし基本的にこの話をつないでいるのは下らない小ネタの数々なんだなあ、と。「車の振動でおっぱいが揺れて見える」とか「中年の好奇心をなめんな!」(ていばって言うようなことかい;)とか、老眼でセットリスト書いた紙が読めないとか、「おなら1回500円」とか、パンチラを見そこねただけで涙する、とか。逆jに言えば、小ネタのくだらなさが合わない人には徹底的に駄目でしょう。私はすかっと楽しみましたけどね。(すいません、下らないネタは大好きです。)
 まあヴォーカルがちゃんと立って歌えるようになっただけでライブが大成功する、というのはあんまりにも都合が良過ぎやしないか(それだけ、でもないのか? オジサン達の画期的な心境の変化?;)、とか、色々思いはするわけだけども、なんだかんだいってちゃんと広げた風呂敷が畳まれているというのは見ていて楽しかったですな。ラストも、え、こんなんで終わりっ? とは思ったけども、エンディングにあの歌を持って来たことでなんだか全て許してしまいましたよ。You don't have to worry,と言われたって心配だろう、あれは;
 むちゃくちゃではあるはずなんだが、同じ邦画シチュエーションコメディでも、「マジック・アワー」あたりのいたたまれなさに比べたらずっと楽しく見られたというのが正直なところ。
 宮崎あおいもこういうこともできるんだ、というのを示せたのは良かったんじゃないでしょうかね。コメディも行けます、みっともない変顔もばりばりやれます、ということで。
 あでも、一番凄かったのは実は田辺誠一かもしれない。田辺誠一なんてどこに出てたっけ、と思ったら、パンフ見たら「TELYA様」だったんですね!; やるなあ。