「永遠のこどもたち」を見る。

 「パンズ・ラビリンス」のギレルモ・デル・トロが関わってる、というので気になっていたのだが、評判が良いようなので見に行った。(ちなみに監督はデル・トロではなくて新人のフアン・アントニオ・バヨナ。デル・トロは製作をやってるそうな)
 「アザーズ」みたいなんかな、という予感はしていたのだが、確かに似たところはあるものの「アザーズ」よりもずっと好感が持てたのだった。多分ヒロインがちゃんと強くて頭をしぼって戦っているからだな。(ちなみに「アザーズ」は私は周囲の評判のほどには感心しなかった。多分ニコール・キッドマンの金切り声と不安定な様子が駄目で、押し掛け使用人達の方によほど気持ちを寄せてしまったせいだろう。)
 不安と恐怖を掻き立てながらも、悲しく美しい話になっているのだった。(ただし中盤の怪しい婆さんを見つけ出した後の描き方だけとんでもないショッカー。あの場面だけ「オーメン」みたいでしたね。ホラー耐性のあるあたくしもさすがに震え上がりましたよ。)
 過去も現在も、ちょっとした行動や選択が、ぱたぱたとひどい方向へ転がっていって、取り返しのつかないことになっている。誰もそんなこと望んでなかっただろうに。気が付いたときには、泣いても喚いてもどうにもならないのだった。
 「パンズ・ラビリンス」と同様に、どうしようもなく悲惨な結果の後には幻想によるハッピー・エンドが続くのだが、この話の場合には本当にハッピー・エンドと思っていいんじゃないかな、という気がしたのだった。子供達はずっとどうにもならないところで救いを求めていたのだし、ヒロインが自分の過ちによる苦難を引き受けて生きていくという図もハッピー・エンドにはならないような気がする。ああいう「幸福」は安易じゃないかとも思うけどね。
 それと、余計なことだが、「アザーズ」の他に思いだしたのは、その昔見た伊丹十三監督作品「スウィート・ホーム」だったり。いわくのある古い邸を舞台に、ヒロインが「子供」を救うために、終盤にスモック姿で駆け回って霊達と対峙する、というあたりのせいかなあ。
 冒頭、ヒロインの子供時代と、終盤に子供時代の「友達」の助けを求めてやる遊びが、「1、2、3、壁を叩け」という「だるまさんがころんだ」にそっくりな奴なのだけども(最後が鬼ごっこになるあたりがちょっと違うのかな?)、考えてみればあれは結構怖い遊びなんですなあ。目を隠してる間に背後では何が変わっているか。変わっていることに振り返った時ちゃんと気付くのか。気付いて平静でいられるのか。結果として現れた「友達」達は悪い「もの」ではなくて、ヒロインにちゃんと息子の居場所を示してもくれるのだけども、それは願っていたような救いではなかったりするのだ。
 とはいえ、幼くして非業の最期を遂げた子供達も、ひとりぼっちで暗がりに籠められた息子も、今はもう苦しんでいないのだと思えば、それは救いなのかもしれず。