神奈川近代文学館にて特別展「堀田善衞展 スタジオジブリが描く乱世」を見る

 時折小雨がぱらつく暗い暗い曇天の下、港の見える丘公園神奈川近代文学館へ。「堀田善衞展」のチケットをいただいてたのである。
 恥ずかしながらあたくしはチケットをもらうまで堀田善衞氏についてほとんど知らなかったのだが、ご存知の方々に伺うところによると、一言で言うならその位置づけは、「美術界の暗黒史」とのこと。
 そうか、と思いつつ、まあ多少偏っているかもしれんが思って縁の品々と説明パネルを眺める。展示のキーワードは「乱世」。金沢の裕福な回船問屋に生まれながら徐々に家業が傾いた、とか、戦中から終戦当時にかけて大陸にいて、戦後の混乱のなかをなんとか引き上げて来たといった経験から、人間の自由と自立を訴えるようになった、というまとめ方。
 しかし堀田氏自身にまつわる文物よりも、この展示の呼び物は、スタジオジブリによる堀田作品二作、『方丈記私記』(アニメ化タイトル『定家と長明』だから『定家明月記私抄』も入ってるのかもしれん。)と『路上の人』のアニメ化企画イメージボード。これがね。うわあこれ動いてるの見たいよう、と思うような代物で。ええと、鴨長明藤原定家は7歳違いくらいの同時代人なんだそうで、でも生まれなどのバックボーンが全然違うんですね。下級貴族(だか、賀茂神社の神主か)として生まれながらも若くして後ろ盾を失い、泥水すするようにして這い上がった長明と、貴族の生まれで生真面目な芸術家で、歌の才により内裏でのお覚えもめでたい定家と。で、天災は起こるわ戦は起こるわで庶民はボロボロの時代なのに、朝廷は新都を建設するやら言い出すので、若い彼等は激しく反発したりする――と、いう物語のさわり、大火のイメージボードや、長明の琵琶を持ち出すために竜巻で命を落とす恋人のエピソードなんかがちょっとずつ示される。なんだか、手塚治虫の「火の鳥」の鳳凰編あたりをジブリがアニメ化してたらこうもあろうか、という印象。キャラクターとしては、長明はジゴ坊+クロトアみたいなしたたかな男で、対する定家はアシタカをもちょっと子供子供して生硬にしたような感じに描かれている。ここまでイメージ造り込まれてるのか、と思うと、なんで動かすとこまでいってないのよー、とじりじりする。
 一方『路上の人』の方は、まだ各人や場面の作りこみまでは行ってないような感じだったけども、美少女ルクレツィアの姿とか、火あぶりの図とかのイメージボードは示されているのだった。
 このあたり、どこかで是非予算付けて企画本格化させてくれないものか。お願い。
 閉館間際まで展示を見て図録を購入し、元町に降りて、ごはんをたべて帰る。雨だけども、公園の中と周辺では、何匹か猫を見かけた。まあ大佛次郎記念館の近くとあって、きっと大事にされてるのであろうけども、雨降りの間隠れていられるとこがあるのかなあ、と心配になったことであった。