東京芸術劇場中ホールにて「白鳥ジャパン大独演会」を見る

 「白鳥ジャパン大独演会 白鳥版「札所の霊験」大絵巻 〜談春兄貴を迎えて〜 ※ゲスト= 立川談春」なる落語会だったのだった。
 ええと、冒頭の白鳥・談春の対談によると、(私は知らなかったんですが)「札所の霊験」なる落語は、三遊亭圓生が得意とした大ネタなんですね。(CDはこちら)しかし三遊亭圓朝が書いた元本(リンク先は青空文庫)読んでも、圓生のCD聞いてもどうもあんまり感心しなかったらしい。ちなみにこの対談中、談春から「でも圓生って師匠の師匠でしょ? 何か圓丈師匠から話聞かなかったの?」と訊かれ、「うーん、師匠のとこに痩せたおじいさんの写真が飾ってあったんで、『師匠のお父さん、似てませんね』て言ったら『ばかやろう、ありゃ圓生師匠だ』って」と、いうくらいのもんだったらしい。あわわわ;
 ――で、今回はこれを『白鳥古典』にしたものを、ということらしく。
 元の「札所の霊験」は江戸時代、人気の遊女を巡って恋の鞘当ての挙げ句の殺しと転落、後年の仇討ちの話、なのだが、ここでは「昭和時代、江古田は日本大学藝術学部*1は童話研究会(だったか、何かそんなめるへんなサークル)で、美人女子大生を巡り、新潟は高田から出てきて特殊メイクを学ぶ田舎学生と、スカした文学青年とのすったもんだから起こった、殺人、転落と十年後の仇討ち」の話になっている。新潟ネタとか余計なネタ小ネタ多し。
 前半と後半に別れていて、間に談春が出てきてダイジェスト版をやる。おちゃらけた白鳥パートに比べて、談春師匠はまくらもなくいきなりものものしい山場部分に入るんである。田舎侍水司又市が、自分を袖にした遊女小増の間夫であり、最前遊郭で自分を虚仮にした恋敵・中根善之進を斬ろうと待ち伏せる、という下り。――が、小増の身請けと、小増改めお梅とその夫の転落、後年の思いがけない再会と泥沼から二人目の殺人、というあたりまで、迫力あるやりとりを挟みつつもかいつまんでぱっぱと話しちゃうと(途中で、「あたしこれ、こないだ3時間かけてやったんだけどね。最初っからこうやりゃよかったかなあ」などと仰る;)時間が余っちゃった。あと7分ばかりあるらしい――ので、その後残り時間で「紙入れ」をやる。色っぽい話繋がりかな。
 白鳥パートと談春パートの落差(談春パートでも講談調にきりっと引き締めてやる合間に、突然白鳥パートを受けて崩れた茶々がはいったりする)に引きずり回された感じではあります。元がこんなにどろどろと哀しくも恐ろしい話だったんだよー、というだけに、ああっ、バカだなあ、ほんとにバカだなあ、と脱力することしきり。
 いやまあ、お陰で楽しうございました。先輩の登場には驚いたね!「犬神家」というよりは、一昔前の「少年探偵団」かルパン三世みたいでしたよ!

 ……
 折角だから、出てきた新潟ネタをメモしておこう。いや、私が言うんではない、白鳥師匠(前座名「にいがた」だし)が言うんである。

  • 新潟にもかっこいい車はたくさん走っている。黄色いラッセル車とか。
  • 新潟県民は雪下ろしで鍛えているので力持ちである。一歳三ヶ月のブタは軽く持ち上げられるくらい――と言って「その例えは全くわからん」と言われる。
  • 新潟県民はかまくらに住んでいる。(と、思われている。)
  • 新潟県北朝鮮の玄関口であると思われている、何かあると「将軍様に報告に行け」と言われる。
  • 新潟は無駄に海岸線が長い。
  • 新潟県民はお握り二個つけると言われると、時給三百円でも喜んで働いてしまう。ご飯には弱い。
  • 新潟県出身男子は「寄らないで、あんたカブトムシの臭いがする!」と言われる。(実話らしい。)

*1:白鳥師匠の母校である