「レッドクリフ」を見る

 映画の日なので、ここしばらく見られなかった映画をまとめてみてやろうかと思う。と言っても2本だが。某所シネコンにて。
 当初当てにしていた「パコと魔法の絵本」は時間帯が合わず、時間帯の合うの、というのでこれになった。
 まあ、大画面で見た方が映えるものではあるし。折角だから見ておこうかと。
 冒頭、日本語のナレーションが入るもので、しまった吹き替え版にしちゃったっけ、と思ったら、日本の配給元が独自に付けた事前説明だったらしい。
 で本編。
 三国志赤壁の戦い、というとそのむかーし「まさし版三国志」をラジオで聞いたくらいだな、という程度の知識で、確か諸葛孔明の策謀がどうたら、という話だったはずだが、どーなんだか、と思って見たのだが。意外に金城武孔明がメインキャラクターになっていて驚き。まあ群像劇だし、アクションキャラクター花盛りに中にあって軍師は暴れないので、狂言回しに近いところだけども。
 いや、主人公はたぶんトニー・レオン演じるところの周瑜なんだろけどね。お芝居などでは孔明との間で策謀の丁々発止を演じる、という役柄だけども、この映画では大軍に立ち向かううちに友情を育む、という勇気・友情・勝利、な描き方にしている。そも、総大将・大都督だし。
 しかし、総大将がアクションはしないよな、と思ってたら最前線に出てって傷負ってる。
 総大将が最前線に斬り込んでっちゃだめだろーがっ!! 首取られたらその時点で総崩れじゃないよ!!
 ……いや、あれはたぶん、幾多のお芝居や講談なんかのお約束なんだろな。そう思うと、アクションはともかくドラマの部分に色々とむずむずするところはあるんだけども、無理矢理納得しないでもない。
 例えば、

  • 周瑜とその妻小喬のらぶらぶな下りが突然挿入されるあたりが、その他のところからとても浮いている。いや、色気も必要なんだろうけど、もうちょっとなんというか;
  • ↑に関連するけど、「馬が難産なんで妻が助けを求めてる」という理由だけで役職を切り上げちゃっていいのか。それと、馬の出産の下りも、小綺麗に都合良くカットしすぎてないか。幾多の動物ドキュメンタリーを見慣れた日本の視聴者は、産まれたばかりの牛馬の仔がずぶ濡れでぬらぬらした胎盤とともに産み落とされて、引きずり出す方も羊水まみれの汗だくだったりするし出産に時間が掛かりすぎると息をしてなかったりするし、生まれ出たら冷えないように大急ぎで体を拭いてやらなならんし、産まれたはいいが立てなかったらもう生きられない――とかいうことを知っていたりするもので。短時間でももっと圧縮して、どろどろの苦労として描いた方が良かったんじゃないかと思うのよ。その方が孔明に気持ちを開く、という場面としても説得力を増したろうし。――ちうか、あれだけの規模の砦だったら軍馬だって大量に抱えてるはずだし、馬の世話に長けた人間なんていくらでもいるような気がするが?;
  • 曹操小喬への執心のため「だけ」に赤壁を攻めた、というのは流石に無理があると思う;まあ執着してたとして、どっちかってと政治的な理由のための行きがけの駄賃てやつじゃないのか?

 ネガティブに気になったのはこのくらいとして。良くも悪くも目に付いた点としては、以下。

  • 金城武孔明はユーモラスな感じを出そうとした、とかインタビューで話している(とパンフに書いてあった)けども、どうもあの笑い方は誰かを思い出させるな、と思ったら、帰宅してから気が付いた。堺雅人だ。――てことは、そのくらいつかみ所のない優男にやらせてもよかった、ちうことかなあ。
  • ヴィッキー・チャオ孫尚香(この名前は京劇からとか)は大変良かったと思う。コメディ・リリーフ的でもあるが、こういう物語にはこのくらいの和やかさが丁度良いんではなかろうか。ドラマに華を添えるなら、周瑜夫妻のらぶらぶは削っても彼女やその侍女の比重を増やした方が良かったんじゃ。
  • 中村獅童演じる武将・甘興は、物語中では意外と脇役だったんで(架空のキャラクターだそうだし)、よく引き受けたなと思ったけども、乱戦の中では「部下達に盾で踏み台を作らせて駆け上がって上から攻撃」なんてこともしてるのだった。アクション俳優としての売り込みであろうか。
  • 最後の「蹴鞠」はどの程度史実に沿ってるのだろう。平安時代の日本に伝わったあれの元になるものがあったとしても不思議はないけど、あんなサッカーみたいなルールだったかどうかは大いに疑問。(平安日本の蹴鞠はリフティング限定だしゴールに当たる物はないらしいので)
  • モブで動いてる歩兵達が、みょーに子供子供した若い連中なんでどっから連れてきたかなあ、と思ったら、エンドロールで「中国人民解放軍六六三××部隊」という記述があって納得。そうそう、あの国はエキストラに軍隊動員できるんでした。(むちむちした細目丸顔が多かったけど、モンゴル系かしら)
  • 映画はそれなりに良かったけど、このタイトルはやっぱり何とも。中国・香港発の全世界公開の映画にどうしてこう無理して英語タイトルを付けちゃうかと。日本だったら三国志の山場として「赤壁の戦い」は充分すぎるくらい知られてるんだから、「赤壁」でいいじゃん。わざと分かりにくくしてどうするよっ。