損保ジャパン東郷青児美術館にて「西洋絵画の父「ジョットとその遺産展」〜ジョットからルネサンス初めまでのフィレンツェ絵画〜」展を見る

 「お客様感謝デー」ということで、入場無料だったのだ。

13〜14世紀にイタリア全土で活躍したジョット・ディ・ボンドーネ(1267年頃〜1337年)は、西洋史上初めて繊細な感情と立体的な肉体を備えた崇高な人間像を描き、三次元的な物語空間を生み出しました。それは西洋絵画の流れを大きく変えただけでなく、自然の探求者レオナルド・ダ・ヴィンチや、感情に生きたゴッホ、色と形を追い求めた20世紀のマティスなど、後世の画家たちがそれぞれの視点から立ち戻る原点であり続けました。

 と、あるように、ジョットの画風は、中世絵画の形式に繊細さと写実表現をもたらし、ルネサンス美術の前段階に当たるものとして評価されているとのこと。実際行ってみてみたら、ジョット個人による作品は点数が少なかったのだが、弟子等の共同製作者達と製作したもの(まあ当時は画家は芸術家じゃなくて職人という扱いだから、共同製作も多いわけですな)その影響を受けた近い時代の作品、時代背景としてフランスあたりから流れてきた国際ゴシック美術の流れなども紹介されている。時代はいくらか前後するが、13〜15世紀初頭あたりまでの教会絵画で、フィレンツェに由来するもの、または現在フィレンツェの美術館や教会などが所蔵しているものがまとめて来ているという展示であった。
 で、一通り見て感じるのは、なるほど中世の絵画にしてはかなり柔らかく明るい感じ、ということ。中世の聖堂の絵というと、もっとごつごつとパターン化された絵柄という印象があったんだけども、どうもそれは欧州北部あたりの流れだったようですな。考えてみればイタリア半島にはローマ時代の遺物が多く遺されてるわけだし、ギリシャ・ローマ時代の美術品に触れる機会があれば写実的表現や、やわらかい線や色彩に憧れることもあろうというものだろう。
 ゴシック美術というのもどちらかというと無骨なイメージがあったのだけど(割と引き合いに出されるのは尖塔などのある教会建築だし)、絵画を実物として見せられると、いずれもずっと繊細でやわらかい印象なのだった。実際その前のロマネスクに比べると、繊細さや明るさ、華麗さが加えられたものらしい。ジョットあたりはその中でも特に簡素化してデザイン的に整理された画面や、立体的な陰影、写実的なポーズなどを加えたものらしいが。
 これはなかなか面白いな、というので、結局図録も購入してしまう。ああ、入場無料の意味はあったのかなかったのか。
 遅い時間まで開館していたので、折角だから高層階からの新宿の夜景を堪能してから帰る。間近に、曲線で構成された真新しいガラス張りのビルが見えて、なんだろうと思っていたのだが、どうやら東京モード学園の新しいビルだったらしい。
 やあ、あれも妙なもんですなあ。隣には球体としか見えない建物がくっついてるし。窓から見えた感じだと、建物は完成してるけどまだ引っ越しはしてきてないのかな。空間の使い方としてどうよ、と思わないでもないけど、見ている分には面白い。(コストパフォーマンスは気になるが;)近くに行く機会がありましたら、是非一度眺め回して欲しいものでございます。