『ベオウルフ/呪われし勇者』を見る

 映画の日だし何か見とこー、と思ったら、見る機会を逃していた封切りから日数の経ってる奴はもう上映回数がかなり減ってて、時間が全然合わなかったのだった。降下福岡、もとい幸いか不幸か今日封切りの「ベオウルフ」の最終上映にタイミングが合うらしいので、これを見ていくことにしたのだった。ファンタジーだし、時代物だし、北欧あたりの英雄譚は好きさ、ということで。

 が。
 フルCGモーションキャプチャーとは知らなかったぜ。
 というのがまず第一。
 いや、あんまり全面に出して宣伝してないでしょ。テレビCMで流してるあのシーンも、街中に貼ってるポスターも、ほとんどそうとは見えないクォリティだし。
 でも、あそこまで実写と見まごうばかりのシーンはほとんどないっす。冒頭、王妃が蜜酒を注がれる金の角盃を掲げてる映像では「何か妙――かな?」くらいにしか感じなかったのが、周囲の人物に視点が移るに連れて明らかに変。
 そっちこっちで「ゲーム画面レベル」とかいう声は出てますが、ほとんどの登場人物はぎくしゃくした「お人形」になっとります。王妃と、序盤が過ぎてから登場する英雄ベオウルフと、その腹心ウィグラーフ、そして予告編で出てくる女怪のみがやたらとリアルで。しかし、彼等さえも、シーンによっては動きはぎくしゃくしてたりする。
 なんでこれ普通に撮らなかったかなー、と思ったけれども、考えてみたら監督・ロバート・ゼメキスは「ポーラー・エクスプレス」の人だったのだった。……ああ、推して知るべしであった。
 ちょっとどうよー、と思いながら見ていたのだが、予告のあのシーンは確かに魅力的であったし(エロには力が入るよ、という典型であろうか)後半〜終盤に入ると、怪物との格闘シーンは大変に見事だったのだった。
 すごいすごい。これは楽しい、怪獣映画ですよ。なんでそういう話だって宣伝しないのかなあ。
 要するに、この映画の画像では、視聴者が見慣れたヒトとか衣類・日用品・建物等々の描写には荒さが目立つものの、見たことのない怪物の描写になると比較対象が無いためか、無心に楽しめるのであった。序盤に出てくる怪物グレンデルも、動きはぎくしゃくしているのだが、そもそも体型や造作が、生まれついてか何かの事故・病気でか、明らかに不格好に歪み内臓や肉を曝している異形として描かれているので、そういう苦しげに動く者なのだ、と納得して見ていられるし。(もっとも、そこへ向かっていく男達のぎくしゃくした感じはまた別)
 それにしても――予告編は魅力的な映像だけど、話の展開からしたらあのシーン、予め知らせといちゃ拙かったんじゃなかろうか? 代わりに終盤の戦闘を、相手の全身像を見せない形で出した方が、アニメ・特撮系のファンを呼び込めたんじゃないかと。
 それはそうと、この映画のR指定はかなり厳しくした方がよかったんじゃなかろかね。予告で出してるアンジェリーナ・ジョリーのヌードについては置くとしても、主人公以外のモブの男達がやられるシーンはかなり残虐性高いんで。そういや下ネタな台詞も結構ありましたが。
(実はそんなことより気になったのは、アンジェリーナ・ジョリーの女怪のデザインが、何故「ハイヒール」だったのか、だったりして。「その方がより『やらしい』」という美術上の拘りだろうか??)

 で、後半など愉しんだは愉しんだんだからいいっちゃいいんだけれども、後になってちょっと。
 家に帰ってパンフを読んだら、お人形にしか描かれてないと見えたフロースガール王とその腹心アンファースのキャストが、実はアンソニー・ホプキンスジョン・マルコビッチであったことを知って驚愕。
 そんな良い役者使いながら、なんてえ人的資源の無駄遣いだよっ!! 普通に撮って、服とか背景とかに手を加えた方がまだ随分マシだったろうに!!
 そういうわけで、やっぱり何か間違ってると思うのよ、ロバート・ゼメキス監督作品。