アランジアロンゾ「うそつきまつり」にて
迂闊であった。
昨年の来訪その他により面が割れていたのであろうか、代官山の駅のホームに降りた途端に黄色い物と黒赤い物に両腕を掴まれ、すかさず彼らのアジトに連行されたのであった。
「約束の物はどうした?」
と責められるもどうしようもない。かねて要求されていた品「黄色いチューリップ」の入手に私は失敗していたのだった。やはり、そんな状態で代官山へ赴くべきではなかったのだ。
「どうなるかわかっているだろうな?」
とツリ目達が私の顔を覗き込んで迫ってくる。やめろ、近づくな、そんな場合でない事は承知しつつも、どうしても笑いがこみ上げるじゃないか。
切羽詰まった挙げ句、私はこう口走った。
「近づくな。私が何の用意もなしにここに来たと思うのか?」
「――なんだとぅ?」
「ここに来る前に、信用できる人間にポイントカードを預けてきた。もし私の身に何かあれば――」
「あれば?」
聞き返しながら、やつらは、何故か、きひひひひひ、と耳障りな声を立て始めた。
「その『信用できる人間』が君のポイントをまんまと頂くというわけだな!?」
「ち、ちがう! ポイントカードからこのアジトとお前達の企みに――」
「ポイントカード忘れてきたって言えよう〜」
「忘れてきたんじゃないやいっ! ちゃんと前回カードケース買ったし!」
叫ぶ私に、彼らはうんうんと頷き返した。なんだか、とても癪に触る光景だった。
「べ、べつに、今買い物してポイントつかなくても、悔しくなんか、ないんだからね!」
ああいかん、これではまるでツンデレ芸だ、と思った時には後の祭り――だったが、何故か奴らの態度は急に柔らかくなっていた。
「なんだ、やればできるんじゃないかぁ」
「4月1日だからって、感心なんかしないんだからね〜、きひひひひひ」
そして私は、突然に解放された。奴らは上機嫌で、黄色いうそ花を振り立てて私を見送ったのだった。
無事解放されて喜ぶべきなのだろうが、私は拳を握りしめて心に誓ったのだった。
畜生、覚えてやがれ、次はきっと返り討ちにしてやるからな! と。
#どうでもいいけどうそつきグッズ少ないですね。缶バッヂぐらいしか買えませんでしたぞ。