国立西洋美術館にてベルギー王立美術館展

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 懸案のベルギー王立美術館展である。マグリットが3枚来ていると言うし、ブリューゲルあたりも好きなので行って来たのである。
 しかし他の作品は肌に合うのかどうか、と思ってみたのだが、思った以上に良かったですな、フランドル絵画。「パトラッシュ、ぼくもう眠いんだ」とかいうことにもならず。(つまりルーベンスもありましたぞ「聖ベネディクトゥスの奇跡 」が、ということで)スワーネンブルフ作「地獄のアイネイアス」なんて、ヒエロニムス・ボッスみたいにシュールだし、ブリューゲル父子や弟子筋・子孫達の書き込まれた画面やら、トロンプ・ルイユらしき緻密な描写やらも楽しいし。それはそうと、どうしてみんなピーテル・ブリューゲル伝「イカロスの墜落」を見て笑わないんでしょうか。あれは絶対笑うところだと私は思うのだが。
(ちなみにこちら(東京アートレビュー)には作品と会場の紹介が)
 ところでユトレヒト作「オウムのいる静物」という作品は、錬金術絵画なのだろうか。背後に鞴動かしてる人物像がいて、脇には蒸留器らしきものが置いてあるんだが。普通の金細工職人? どうも手前の絢爛豪華さとの対比で「鞴吹き」がひっかかってしょうがなかったですよ。
 フランドル絵画は18世紀の混乱期にはほぼ断絶して、近代絵画に移行した19世紀に入るまでほとんど作品がないのだそうだが、このあたりのテーマの分かれ方もいっそ潔くてよろしゅうございます。
 マグリット「光の帝国」の前は、さすがに人だかりができていた。大きいし、ポスターにも使われてるし、何より青空の明るさが目立つのですな。実はああいう光景は、夏の明るい日の夕方、日の陰った木立の中から天頂の空を見るというとごくあたりまえにあったりするのだが、それでも何か不思議な感じがするには違いないですな。マグリットにはこれは何か強く心惹かれるテーマであったらしくて「光の帝国」というタイトルで何枚か同じような構図の絵を描いているはず。
 他に来ていたマグリット作品は「女盗賊」と「血の声」。なんでこれが女盗賊やねん、血の声やねん、と思うが、そこがマグリットだからなあ。しかし描き込み具合で言うと、「女盗賊」は他の二枚より格段に力が抜けている感じ。風景画の方が何か引っかかりがあったのか。
 ともあれ結構堪能して、図録を購入して西洋博物館を出たのだった。勿体ないが今回は常設展はパス。