学習院中・高等科にてニセ科学フォーラム

 かねて興味を持っていたので、この機会に聞きに行ってみたのだった。(ちなみに懇親会までは参加してないのだが)
 内容としては、まず三人の先生方の講演と提案。それぞれの後に質疑応答があり、その後でまとめて大討論、という形式。
 講演のお題は以下。(それぞれお題の下に書いた内容は、私のごく大雑把な印象によるまとめと感想)

 主に教育の問題点。「ゆとり教育」等による表現力・読解力の低下と、科学的なものの考え方の欠落という問題について。水商売(クラスター水とか磁気水とかそういうの)の問題などもからめたお話。
 従来修得すべき項目が多すぎる詰め込みが問題になったことからはじまった「ゆとり教育」だが、何度かに渡り教育課程が見直され内容が削減されていく過程で、学力診断テストにおいて正答率の低い項目を削るということが行われたそうな。(ちなみにその結果、子供達の理解度が十分に上がったか、というとそうでもない)
 米国などでは過去には、一部の理系の専門家教育を除けば、一般向けの理科教育は生活に即した知識から(のみ)という姿勢だった。結果、「ショッピングモール・スクール」とも呼ばれる、生徒の興味に特化した様々な教科が用意されてはいるが(例えば自動車科、など)包括的・系統的に教えるという面が欠けていると指摘されるようになり、それでは科学知識の理解力や技術力は上がらないというので見直されはじめている。ただし米国の場合、貧富の差や民族の差など、生徒による生活環境の差が激しく、それに対応しなければならないと言う現実もあるので、一概に日本に取り込むわけにはいかない。
 子供の学力も問題なのだが、大人になると更に、表現力・読解力もない上に科学的なトピックへの興味関心も低下しているという問題が。

 菊池氏がかねて取り上げている「水からの伝言」の内容説明と問題点。(会場には「水伝」をご存じない方もいらしたので)更にこれが授業で使われたという事情について。西宮市内で電話調査したところ、十数校で既に授業に使われていたそうで。実際使った先生方と話したところでの、使用に至った考え方や、問題点の説明に対する反応など。
 まあ、ほとんど上記のブログなどでも繰り返し書かれてることですが、実際のリサーチの話など聞くと面白いですね。いや当事者は面白がってられない切実な問題なんですけども、先生方も真面目にやってるだけに微笑ましくもやがて哀しきというか。

 世に流布した「マイナスイオン」商品の実体と問題点、それらへの対処について。
 いまだにたくさん出回っているようだけど、さすがに大手家電メーカーなどは撤退しはじめたらしい。「マイナスイオン」を別の呼称にを変えただけ、という部分もあるけども、世間一般に「マイナスイオン」なる概念がが定着しすぎて、商品の付加価値としてあんまり目新しいインパクトがなくなってきたからということかも。
 ドライヤーなどでは、実際「静電気を抑える」という効果は持っているため、実際に使い勝手として好評という面もあるのだが、それはあんまり盛んに謳われている「マイナスイオン」の効果ではないような。

 で、討論で何とか前向きにまとめようとしたところでは、教育の問題は「ゆとり」ではいかんという方向へ変わっては来たものの、効果的な改善が行われるかどうかはまだ未定。大人にも啓蒙しなきゃいけない部分は多そう。
 「水伝」や「活性水」や「マイナスイオン」など(他にも各種健康食品や、最近では「貼り付けるだけで自動車の燃費が良くなるシール」なんてのが)、実際の効果がない商品に関しては、ネットや消費者生活センター、公正取引委員会等に声を上げていくのは大事だろう、ということで。

 ただまあ、命に関わるようなことでもなければ、普通に生活している限りではそれほど科学的に疑いの目を持って暮らす必要はないのでは? という声もあり。確かに「ニセ科学」商品でも。この程度のお金を出してもいいと思える程度なら問題ないかも知れないが。価格とか、ニセであることに不利益をきちんと見極めることが必要ではないか、ということになる。
マイナスイオンあたりだと幸い善くも悪くも実際の効果はほとんどないが、薬品とか健康食品になると実害が出る例もあるし、ニセ商品を過信しすぎて必要な治療を受けない場合もある。

 そんなわけで有意義に楽しい午後を過ごさせていただいたわけだが(いやほんとに楽しい内容で。シニカルな笑いではあったけども)子供に「水伝」授業をされた親御さんとか、身内が高額な水商売商品やマルチまがいの化粧品にはまったりしてる方は笑えない内容なんだよなあ、と。
 何もかもを疑って暮らすのもたいへんだろうけど、ともあれ、あんまり効能を素晴らしく謳い上げるものは疑った方がいいよ、くらいに気を付けることはできるんじゃなかろうか。普通ちゃんと効能が分かってるものは、何にでもどんなふうにでも都合良く効くってことはないし。薬だって、一番使い物になるのは、ピンポイントの特異的な効果が分かってるものだしね。
 しかし、世間一般の――特に理系・技術系でない人々――が、こういうことはどのくらい分かって暮らしてるか、という不安はありますな。まあ生活に影響しない程度の金額で、そんなに期待しないで「お守り」のつもりで購入する程度なら、むしろ微笑ましいことではある。でも実際、とんでもなく高額な眉唾な商品がごろごろしてるところをみると、ニセ科学で商売する側にしたら今の世の中はカモだらけじゃなかろうか?

ニセ科学フォーラム参加者レポートのリンク集が出来ています。
 ……なんでうちがトップにくるのや。今だけ?;