「ダ・ヴィンチ・コード」を見る

 そろそろ空いた頃だと思って見に行ったのだった。他にも最近封切りで見たいものは色々あるけど、まあ当分掛かってるだろうから大丈夫だろう、ということで。(そういってる間に「花よりもなほ」は終わっちゃったのだが。くそー;)
 感想。なんだー、普通に面白いじゃないですか。荒唐無稽で。
 いや面白いんですけどね、あれを見て真に受ける人がそんなに居るんかい、というのが正直なところ。だって主人公達が仮説として言ってることや、殺人犯とその黒幕達の主義主張があんまりにも極端だし。過去の欧州史を振り返ればキリスト教に絡んで冷酷な弾圧があったりしたのは本当だけど、カトリック教会全体がいまだにそれを守ってるとは思えない。(実際アリンガローサ司教の台詞でも「これがばれたら私は確実に破門だ」とか「影の評議会は現在も過去にも存在しない(ことになっている、ということか)」とか言ってるから、彼等は決して主流派ではない。おそらくオプス・ディ内においてさえ)
 私もそう詳しいわけじゃないのだけど、中世の魔女狩りで迫害された女性原理的な思想や習俗というのは、マグダラのマリア信仰というよりもケルトやゲルマンの土俗に遡る地母神信仰じゃなかったかな。(実はせいぜいこの辺で書いてあったのを読んだ程度;)まあ末端の布教の現場で聖母信仰や聖アンナ信仰やマグダラのマリア信仰と習合されたというのはありそうだけど、そういう元々がはっきりしないイメージと習俗のレベルのものなら、そこにマグダラのマリアの遺体の存在とかキリストの子孫がどうとかという事実が明かされたところで、末端の信仰に影響しそうもない気が。だから映画の終盤で、黒幕が聖杯を求めた真の理由が明かされても、どうもこいつはただのカルト的誇大妄想だぞ、としか思えない。
 しかしま、謎解きとサスペンスの映画としては面白いですよ。映画らしく検討過程の説明を省くせいか、「おいおいその手掛かりからそんな結論が確定するかよ;」というところは多いのだけど。どきどきしながらも、見ながら「なんかRPGみたいだなあ」と思ってましたよ。謎を解くとフラグが立って次のステージに移る。次の謎が提示される。しかしドラマとサスペンスもありましたな。各ステージで行く場所、頼った先々には次々追っ手が現れて危険にさらされるし、警察内部も悪役「オプス・ディ」内部も思惑と欺瞞で揺れ動くし。何よりポール・ベタニーの刺客修道士シリスのキャラが立ってました。冷酷だが傷ついて影がある。
#いいけど、ポール・ベタニーは私の見た限りの映画で出演するたびに全裸を披露してますなあ。何故だろ? まさか、ポール・ベタニーの裸体ファン層とかいうのが存在するのだろうか。

 惜しいところとしては、折角ルーブルロケをしたというのに、ルーブル内のシーンはどこも駆け足でさっと映すぐらいにしかしていないので、あんまり味わう暇がなかったということ。考えてみれば最初に殺される館長も、半死半生であんなに動き回ってメッセージ残すなんざ間が抜けている。しかも美術品を血文字で汚すなんざ学芸員らしからぬ振舞だし。(モナリザにですぜ! あ、あの場合の展示品はどうせレプリカだから、なのか?)
 後でちょっと考えたけど、この映画はもしかすると、メインの主人公達の追いかけっこと謎解きよりも、仮説の説明の合間にちょっとずつ挟み込まれてる歴史上の場面の回想映像の方が豪華だったりしないだろうか。実はカルト的歴史愛好家としては、こっちの部分だけ抜き出して別の映画にしてくれんかな、などと思ったりもするのだけど。DVDの特典映像になってたりとか……?