「ブラック・スワン」を見る

 「豆富小僧」を見終えた後、シネコンのスケジュールがちょうど合ったもので。いや、見るつもりではあったんですよう、かねて。ナタリー・ポートマンのアカデミー受賞作だし。……まあ、それにしてもこの組み合わせはどうよ、と思わないでもないけど;
 で映画。
 とりあえず、こええええ!
 宣伝ではバレエ映画とかサスペンスとかじゃないっす。演出はホラーっす; スプラッタ傾向の、痛い痛い痛い、て感じの。
 ガラス粉で痛めつけるトウシューズ、ジンマシンの引っ掻き傷、爪切り、暗い路地でのすれ違い、爪の端からにじむ血、等々、細かく厭な印象のものを連ねていって、ヒロインの追い込まれる心情とともにエスカレートしていく。それと「厭な印象」のものだけじゃなく、違和感のあるもの、も多いですな。ヒロインと母親の関係にまつわるものが多いみたいだけど、二十代半ばを過ぎてる(設定は27だったかな?)はずがぬいぐるみだらけのピンクと白のふわふわした印象の部屋とか、母親が「お祝いに」といって用意したバニラといちご味のクリームたっぷりのでかいケーキとか。もちろんそんな高カロリーのもの食べられなくて断ると「じゃあ捨てるわ」とか言うし、母親も微妙におかしい。
 どこまでがヒロインの幻想か、周りの人との間に本当にあったこと、かの境目は明らかにされないまま話は進む。ライバルの新人と過ごした一夜が夢か、というあたりでようやく幻想の可能性を示されるくらい。
 しかしなあ。ああなるほどこの辺は幻覚の可能性もありなのね、と気づかずに見続けたり、ホラー耐性がない方が見たら、辛いだろうなあ、と思うことも。
 前にツイッターで聞かれたのでお答えしたのだけども、この怖さは夜トイレに行けなくなる感じ、ではないと思います。でも痛みとか混乱とかに耐えなければならない、ストレスフルな怖さとは申せましょうか。

 ところでバレエ業界に詳しい方によると、こんなぼろぼろの状態の新人プリマ一人だけを踊らせるバレエ公演はちょっと信じられない、この状況ならそれまでのプリマとダブルキャストにして様子を見るとか、もっと安全に公演を維持できるように考えるだろう、とのこと。
 まあ私も見ながら、こんなことになってこのバレエ団大丈夫か、という気はしましたけどね;