明治大学商学部 佐藤亜紀特別講義第一回

 お茶の水駿河台キャンパスのリバティタワーにて、今年も月一回の特別講義があったので聞きに行ったのだった。
 今回は今年の初回ということで、去年までの概略のおさらいのような感じ。日常に現れる暴力性、と、「歴史」なるものの実態/認識についてのお話。
 「歴史」の例えとして、よく駅売店なんかで売っている「ゆで卵を入れた赤いネット」という表現をしとられたですな。ネットの中に入ったいくつかの卵が、実際に起こったこと「実態」――を、取り巻いている「言説」で、「歴史」というのはそれらをくるんで外側を巡ってつなぎ合わせている「ネットワーク」である、と。「歴史」は中身の詰まった本物の「実態」に迫ろうと、「言説」の中からできるだけ信憑性のあるものへと絞り込もうとするけれども、
「歴史」が中身であるはずの「実態」をちゃんと表しているか、というとそれは永遠に分からないことかもしれない。それは実際、タイムマシンを使って過去の現場を見て来でもしないと分からないことだから。
 ただし、分からないこと、ではあるけれども「歴史」の認識が、現在生きている人々に、生々しく拭いがたく影響を与えてしまっている場面もあって。(例えば戦争犯罪被害者とか、その家族とか)そこで「○○ってほんとにあったかなかったかは分からないよね」なんてことを言ったら殺されかねん、というくらいの影を落としてる場合もある、それが現実だったりする。
 だから、「歴史とは物語である」などと言う声にそうそう同意もできないのだ――といったお話。(以上は私の聞いたところから勝手に要約したものなんで、聞き間違い/誤解等ありましたらご指摘いただけるとありがたいです>関係者各位)
 講義後は、佐藤氏と聴衆のうち二十数人ばかりで、アカデミーコモン下の喫茶室で1時間ほどお茶をし、さらにいつものイタリアン食堂に流れて宴会をしたのだった。