渋谷区立松濤美術館にて「ガランスの悦楽 没後90年 村山槐多」展を見る

 村山槐多は、高村光太郎らが認めた夭逝の画家/詩人である。乱歩なども彼の絵を特に請うて買い求めたという。
 そういうこともあってか、美術・文芸のマニヤあたりには現在でも熱心なファンが多数存在する。私はファンというほどでもないのだが、折角の肉筆画を見る機会なので、最終日に出掛けて行ったのだった。
 槐多の絵と言うのは強い色彩を大胆に塗り重ねたという感じなのだが、全体としては柔らかく調和して見えるのだった。藍色と赤紫(これがガランス、茜色だそうな)を重ねて描く、なんてことをしてるのに。
 会場内の各所には槐多の詩も書かれていて、激しい言葉だの、気性もこんなんかの、と思ったのだが。(高村光太郎によれば「火だるま槐多」だそうだし)考えてみれば、彼は二十代の始めで病死している。これらの絵も詩も手紙類も、十代後半から二十歳そこそこの若者のものなのだった。
 ううむ。もし現代で知り合っていたら「ち、中二病が」とか思うだけだったかもしれん; 認めて引き上げくれる人が居るって大事だ;
 ちょっと気にはなったが図録は買わずに帰る。惜しかったかもしれませんけどね。槐多作品はいろんなとこにあって個人蔵も多いようだから、これだけまとまった作品展をやるのは結構大変だろうと思うし。
 しかし松濤美術館というのはこの槐多の企画にはうまくはまっている気がしましたな。壁に詩の文字をプリントするとか、展示の演出も面白かったし。熱心な学芸員の方など居られるんでしょうかね。