「ココ・シャネル」を見る

 地味ながら評判が良いようだったので、かかっているうちに見に行く。
 世間の視線と闘いつつ社会的・経済的成功を収めた女の一代記である。
 んでもね、まずこの話に思うのは、「男って、男ってほんとに!!」……いや、これは多くの誠実な殿方に失礼ですな。正しくは「金持ちって、金持ちって」か、「お貴族って、お貴族って」か。とにかく女は基本的に、自分に都合の良く楽しく遊ぶための相手らしく、それにあんまり罪悪感も持たない――というか、女に負担を強いてる自覚もないか。若き日のガブリエル=ココ・シャネルに関わる男達はどちらもそんな感じ。彼女の才能と奔放さを理解し援助する'ボーイ'・カペルでさえ、結局はそうなっている。
 とは言うものの、女達も強かにそんな男達をあしらい、利用もして生きているようだし。それに、実際のココ・シャネルの激しい気性は、ここに描かれている程度のものではなかったらしいのだった。きっとそれも、大人の判断というものなんだろな;
 しかしこの映画は、服飾史や文化史として見ても面白い。いつ頃コルセットを捨てたか、丈やシルエットにどんな縛りがあったか、ある素材がいつ頃まで婦人服には不適切とされたか、等々、19世紀〜20世紀初頭の世の中での女性の振舞いに関する規定、抑圧が描かれているし。そしてこの二つの大戦を挟んだ時代に、如何にしてシャネル他の女達が暮らし、装おっていったか、という物語なのですな。
 作中、若い頃を回想する晩年のシャネルは、70を過ぎてなお強かで休むことを知らない女傑なんだけども、手に追えない婆さん、だけども一目置かずにはいられない佇まいや物言いなのだった。(マルコム・マクダウェル演じる苦労人の経営担当者は気の毒だが;)
 ちょっと、あやかりたい見習いたい、と思うところはあるやね。

 さて、これはこれとして、オドレイ・トトゥ主演の「ココ・アヴァン・シャネル」も見とくべきかね。