東京国立博物館平成館にて第62回式年遷宮記念特別展「伊勢神宮と神々の美術」を見る

 この週末いっぱいだったんで、駆け込みで。色々と綺麗な物がある、という評判を聞いたもので。
 うむむ、流石にお伊勢さんの奉納品。いや、本来、遷宮の際に古い宮にあったものはきっぱり廃棄してしまってたということだから、古い物では残ってる方が稀なわけで、完全な形で残ってるのはほぼ昭和以降のものなんだけども。それだって相当な品物なんであるよ。宝剣とか。お装束とか。工芸技術の粋を結集したというか。
 多少古い物だと、髪の毛のような薄さに削った歯の櫛がぎっしり詰まる蒔絵の化粧道具箱とかね。ぐおおすごいもの造るな、いや徳川展あたりでもこういうの見たようだけども、この手の込みようがちくしょうー、とちょっと泣きそう。
 また、美術工芸的な意味よりも、実は歴史的/博物学的意味合いが強い展示でもありましたな。古い出土品から、お伊勢さんとはなんぞや、という背景を示すという。驚いたことに、鎌倉時代伊勢神宮禰宜が、同僚の禰宜の死に際して奉納した「写経」があったり、また奈良は西大寺のお坊様がお伊勢さんに参詣して「感得した」「仏舎利」があったりする。――宗教的アイデンティティなるものはどこへ; いや神社とお寺が別物だてえ意識は双方にちゃんとあるわけだけど――習合してるとこもあるけどね、この場合伊勢神宮は神宮であるわけで――それでありながら禰宜が写経したり坊主が神社に参詣したりすることが普通に行われてたというのがなんとも。宗教的、民族的、習俗的に「違うもの」は必ず対立して行く、という民俗学的な法則にも色々と例外や適用範囲の限界を考えるべきかもしれんですよ。
 そんなこんなで大変良かったですよ。けどちなみに、巫女さんは居なかったですよ?;