「ダウト〜あるカトリック学校で〜」を見る
アカデミー賞助演女優賞にメリル・ストリープがノミネート、というので気になって見に行ったのである。
カトリック学校での厳格なシスターである校長の、教区の若い神父への反感と疑念から生まれた軋轢、という話なのだが、こういうプロットだけ聞いて私の浮かんできたのは閉鎖的な全寮制お嬢様学校とかだったのだった。実際には、1960年代の、ニューヨークの下町にある小学校らしいのだが。どっちかというと労働者階級でカトリック、となるとアイルランド系が主で、そこに一人だけ黒人少年が、という事情が物語の基盤にある。
以下、ネタバレを含むので畳みます。
で。映画なんですが。
むう、確かに画面や空気は、美しくも緊張感をはらんでうまく出来ている。が、物語の展開や基盤にある差別感情や疑念というやつがじわじわと不愉快なので、後味は決して良くない。しかも謎自体は解かれずに終わってるし。
とはいえ、それこそがおそらくこの映画で描こうとしたことなんではないか、とも思うのですよ。例えば一見普通に会話してるシーンでも、しょっちゅう電話とか他の人が入ってくるとか電球が切れる、とかいう雑事が挟み込まれてます。通奏低音のように、そこはかとなくじわじわと「厭」感を増幅してみせる。
しかしその一方、嫌味なシスターを演じても、メリル・ストリープがきっぱりと美しいのがよろしい。潔く強く、しかし結果として出てくる判断と行動は色々おかしい。要するに狭量なんですが、対する神父も揺らいだり隠し事をして頑なだったりするあたりから、やはり校長の方が正しいんじゃ、という気にもなってくる。
地味な話ではあるけど、この方のこの役でのノミネートについては、さすがにずっと見てる業界人は目の着けどころがちがう、と思いましたね。(話題性や興行収入からしたら「マンマ・ミーア!」だよねえ)
ところでこのお話、元々は舞台劇なんだそうですね。舞台版では登場人物は四人だけで、子供達は全く出てこないとか。
ミサや、シスター達・子供達の生活のシーンを入れたのは概ね良かったのだけど、冒頭がジミー少年の朝、から始まるのはちょっと良くわからない。この子が主人公か、あるいは狂言回しか、と思って見てたら、特に重要な役割でもなかったし。
だいたいジミーのようにちゃんと気にかけてくれる子がいるなら、黒人少年も孤立してるわけじゃないんじゃ。まあいじめっこがいて辛いには違いなかろうけど。
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