「ディファイアンス」を見る

 そういうわけで懸案のディファイアンス」を見てきたのだった。もうちょっと先でもいいかと考えていたのだが、上映スケジュールを見たら軒並み上映回数が減ってるようだったんで、ちょっと慌てて。
 で、行ってみるというと。平日夜のシネコンの最後の回とはいえ、観客がヒトケタってのはちょっと酷くないか;
(以下ネタバレを含むので畳みます)
 見た人の評判はそんなに悪くないと思ってたんだけど、戦争映画だからかなあ。映像としては華やかさには欠けるし。初雪の中の結婚式とか、綺麗なシーンもあるんだけど、間に別のところの戦闘の、血腥い映像を挟みながらだしね。
 この景気の悪いご時世に、殺される追われる逃げる死ぬ飢える寒い飢える待ち伏せる殺す死ぬ襲う死ぬ追われる殺す追われる逃げる、とかいう話を見たい人は、あんまり多くはないのかも。
 森の中の戦闘の情け容赦なさは、「パンズ・ラビリンス」の現実部分を思い出しましたが、あの映画よりもこれは更に華やかさや柔らかさの要素は少ないですしなあ。

 森の中の逃亡ユダヤ人達の共同体も、暖かい季節のうちはまだいいんですが。女性が増えて、若者達がつつましくいちゃいちゃしてみたりとか、ねぐらを造るの食べ物を分け合うの、政治がどうたら共産主義がどうたらとか議論してるうちは。
 しかしベラルーシなんて相当寒いとこだし、食べ物も尽きてるのに仮小屋でオーバーまで着込んだまま震えてるとこにチフスが流行ったり、リーダーまで厭な咳が止まらなかったりするし。お馬は可哀想でしたな。まああの状況では当然の対応なんだろうけども。――狼は食ったのかな? 毛皮でも取っただけ?
 まあユダヤ人もやられてばっかりじゃなかった、やる奴は復讐もしたし生きるためには略奪もゲリラ戦もしたし、食べ物や主導権を巡って内紛や粛正もあったり(連合赤軍を思い出しましたよ。いや知ってるって程知ってる世代じゃないけど;)、ドイツ兵(絵に描いたような「アーリア人」)を捕まえたら身内や友人知人の恨みを込めてリンチにかけたり、というのをちゃんと描いているあたりは画期的でありましょう。虐殺にあった気の毒なユダヤ人、という描き方でなくなったあたりは。
 しかしな。緊迫したゲリラ戦や死の恐怖や不安が連なって、かなりしんどかったのも確か。テーマからして重いのは明らかだし、とってつけたような救いのイメージを盛り込みすぎなかっただけ良い、とも言えるけども。ペニシリンを奪いに警察襲撃した後では、熊男の次男坊はほとんど死んでるんじゃないかという気分でしたし。(や、なんか結構撃たれてたみたいだったし。次に登場したときにみたら腕を吊ってただけだったけど。)
 で、中盤過ぎてもまだ1942年の春あたりなんで、この調子でどこまで描くのかな、と思ったら、ドイツ軍に追われてキャンプが移動したこの夏の始めあたりまでで終わり。この後キャンプの人員は1200名余まで増え続け、学校やら保育所やらまで備えた一大コミュニティになった、というのは最後のナレーションでのみ語られる。
 その辺の方が気になるんだがなあ。そこまでの規模ともなると略奪や買い出しだけじゃ養い切れないだろうし、襲撃受けても着の身着のまま逃げ出すわけにいかないだろうし。自分たちで作物造ったり家畜育てたりもしてただろうか。1200人と言えばそこそこの大きさの村くらいの規模だし、動ける人間を男女問わず武装させたら、そこそこの規模の部隊になると思うけど。
 ところで最後の部分では四男のことには触れてなかったけども、彼は映画の脚色で加えた創作なんだろか。……原作を読めって事かな。

ディファイアンス ヒトラーと闘った3兄弟

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