そごう美術館にて「ウェッジウッド -ヨーロッパ陶磁器デザインの歴史」を見る

 老舗とか手工芸品とか王室御用達とかいうものに弱い私は、当然ながらウェッジウッドも好きなんである。たとえ量産品であろうとも。まして一点物をや。
 加えてジョサイアI世はダーウィンのじい様だし、下層階級から技能とセンスで這い上がった人だというのもポイントである。ついでにいえば――そこが大事なんです!((c)森薫)だが;――ウェッジウッド製品が中流以上のご家庭に定着し会社が事業を拡大したのは、ヴィクトリア朝時代のことである。
 そういうわけで横浜まで出掛けた次第。ちなみにこの企画は、ウェッジウッド社創立250周年企画なんだそうである。1759年に最初の工場を設立したんだそうで。(ついでに言えばこれは「種の起源」刊行の100年前、チャールズ・ダーウィン誕生の50年前。チャールズ・ダーウィン本人はジョサイア1世の死後に生まれてる)
幸いというか、日曜夕方のそごう美術館は空いていた。なんでこれを見に来ないかなー、と思う一方、空いてるせいでかぶりつきで見ても周囲のご迷惑にならない。だって展示品が細かい細工物だったりするし。特にジャスパーのカメオの部分とか。
 会場にはウェッジウッドの特に価値のある陶器を単品で飾るだけでなく、何ヶ所かウェッジウッド製品を使ったテーブルセッティングの展示もあったのだった。むうう、こういうものには弱い。テーブルセッティングが作れるってことは、まとまった数が入手できるはず。ということは売ってるんだろか。展示品の壺とそっくりのレプリカとみられるものも使ってあったりしたんだが。(それともレプリカじゃなくて、あれはあれで同時に作られた本物?;)
 展示品には、歴史的な価値のある技術とセンスの粋を凝らした名品や、王室等の記念事業として売り出した記念マグカップ等の他に、過去に量産品として売り出して好評を得た普通の陶器なんかも置いてあった。カリフラワーやらパイナップルの形を模したティーポットとかね。恐らくどこかで普通に使われてたんでしょうな、ちょっと古色がついている。
 あと、ジャスパーなどの「ウェッジウッド」の定番の他に、現在までにウェッジウッドで仕事をして好評を得ているデザイナー作品の代表例とかも。これはこれで面白いし、これだけの会社に入ってデザインを担当するとなるとそれなりのものを出さなきゃならんのだろうけども、ぱっと見てウェッジウッドとは気が付かないよな、と言う感じ。
 しかしやはりあれは、ジャスパーやブラックバサルトなどの代表的な名品を愛でる展示ではないかなと思うことだった。だってなあ。近くで見れば見るほど、カメオのレリーフの繊細なことよ、と。英国人もやるもんだ、とため息が出ることしきり。しかしこういう綺麗なものをちゃんと作ってる一方で、ジャポニズムを導入しようとすると途端になにかおかしくなってるのは何故だ。「ジャパン」とかいうシリーズも出しているようなのだが、日本美術の影響を受けた図柄が、消化しきれずに変な形で面に出ちゃっているような。
 とはいえ繊細な細工物にだいぶあてられて、うかうか売店で何ぞ小さいものでも、とかふらふら買い求めそうになっちゃったのが恐い。いや図録しか買わなかったんだけどね、手頃な値段でコンパクトなジュエリーとか小箱でもあったら買っちゃってたかもしれんですよ。ああ手頃なものがなくてよかったよかった。