「レボリューショナリー・ロード」を見る

 そういうわけで見てきました、「レボリューショナリー・ロード」。
 いやあ。噂に違わず酷い話で。
 ほんとに酷い話で。
 でもよく出来た映画なんだな。
 以下ネタばれのため畳みます。
 中盤は結構幸せそうでもあるので、なんだ、救いもあるんじゃ、と思ったら、これはやっぱり持ち上げておいて落とすのだった。
 ケイト・ウィンスレットは大変綺麗だし、鼻赤くして泣いたり興奮したりするところは愛らしくもある。その点はデュカプリオも、涙ぐんだり恥を覚えてうろたえたりするところはかわいらしく見えるくらいなのだが。
 が、途中ではたと気がつく。そういう共感やら同情を誘う顔つきって、子供の顔なんだよね。よかれと思って裏目に出まくりで、うろたえてべそかいちゃう子供。序盤で「男じゃない」みたいなこと言われて怒り狂ってましたが、その意味ではどんなに虚勢張っても「男」ではないかも。l
 とはいえ奥方の方もかなりエキセントリックだし。いやよかれと思ってやってるのはよくわかるけども。あそこまで突っ走るか? しかも完全に頭が冷えた状態で? と思うとね。
 最後まで見て、この話はホラーだったのかな、と。いやスーパーナチュラルな要素はないけど。だからどっちかというとサスペンスなのかもしれないけど、はらはらどきどきよりはじわりとまつわりつく厭な怖さに近いし。まるで蟻地獄に落ちてくのを眺めているような。
 で、二人だけでなく隣人達も、愛想のいい微笑みと陽気な反応の割に、実はみんなじっとりと厭な奴だったりする。いや、普通にある欠点とか悪意ではあろうけど、楽しげで明るく親切そうだっただけになんとも。
 中でも、特にキャシー・ベイツの不動産屋のおばさん。やあ、なんか腹にありそうなおばさんってったらキャシー・ベイツなんですかね。(「ミザリー」だしな;)終盤の台詞で、私は途中の会話に出て来たウィーラー家の女の子の人形の家を思い出しましたよ。それと、ジョンは何度も「おままごと」と言ってたけど、あのおばさんがやってるのはそういうことなんですな。お気に入りの綺麗な白い家に、気に入った美しく健康的な若夫婦を住まわせる。自分はそこへ親しい近所のおばさんとして登場して鑑賞する。しかし自分の基準に合わないとなると、「変な人たちだったわ」になっちゃう。
 ジョンも相当厭なやつ(正直過ぎるし、かといって朴訥というより傷口をこじ開ける毒舌だし;)だったけど、あの母上に接していたなら無理ないかも。で、旦那さんだけは、彼女の対処法をちゃんと知ってる訳ですな。
 この映画はデートムービーではないけど、所帯持ちまたはステディなカップルには是非お勧めしたいですな。いやどう考えても身につまされて快くはないんだが、この映画の夫婦喧嘩やすれ違いをみて、「うちはあそこまでひどくない」「何があってもああはなるまい」と思うのはきっととても良いことと思うのよ。
 何、私? いやとりあえず私は、ああ独り者でよかった、と心から思いましたけども。ほほほほ。