猫と蚊と

 美術館からの帰りに上野公園で猫を見かける。
 まだ若そうな、愛らしい三毛。当然近付いてコンタクトを試みる。何度か試み、かなり近くまで寄らせては貰えるものの、触りそうになると怯えたように逃げてしまう。
 そうこうしているうちにふと気が付くと、私の臑には、幾つかの黒い点が。
 蚊だ。
 わあなんか痒いと思ったんだよー、と払い落とし、名残惜しいが猫との交流は諦めて立ち去る。
 売店もほぼ閉まってきている時刻で、公園内で虫さされ薬なぞ手に入らないよなー、と困惑するも、思い付いて入り口近くのカフェテリアに。赤ワインを注文して、擦り込んで、当面落ち着くことができたのだった。
 いやほんとに効くんだ。しばらく擦り込まなきゃいけないけど。
 しかし残りのワインはそんなにおいしくなかったよ。言っちゃ何ですけど。
 後になって、私がこれだけ刺されてるってことは、あの三毛さんの耳やら肉球やらはどんなことになってるんか、と想像し、ちょっと哀しくなったことだった。できれば虫除けとかつけてやりたいが、なあ。