礫川浮世絵美術館にて「「月百姿」を主に月岡芳年展」を見る

 某所で情報を得て、初めて礫川浮世絵美術館に行ってみる。後楽園/春日/水道橋の駅にほど近いビルにある、私設の小さな美術館である。
 着いてみると受付に係の方は居られるものの、中は電気が消えている。人が居ないときは消しているのだそうで、ほどなく点灯してくれたのだが、お陰で周囲を気にせずゆっくり見て回れた、ともいう。
 芳年前に太田美術館で妖怪画を見た際に知って、以来ちょっと心に留めていた絵師だったのだが、それがまとめて展示される、というので来てみたのだった。(あと、先日見た全生庵の幽霊画の中にも芳年作品がありましたね)今回は「月」をテーマに作品を集めた、ということで、大江山鬼神退治とか牽牛織女、竹取物語に玉兎と孫悟空、天狗と伊賀局など、伝説やお芝居の演目に因む、夜や星の幻想的な題材が多かったですな。このために自然と「あやかし」の割合も高くなった、ということであろうかと。
 芳年の絵というのは、全体に線が柔らかくて艶めかしい感じがしますな。その一方で、鬼とか武者達などは筋肉の盛り上がりも無骨で荒々しいのだけど。人が少ないから、ということで、係の方が、刷りに使われている顔料のことなど少し説明してくださる。部分によって雲母(きら、というやつだ)が仕込んであったり、凹凸が出るような粘りのある黒を使ってあったり。
 ゆっくり堪能して、絵はがきを購入して出たことであった。「開けば開くほど赤字なんですよ」などと言っておられたが、なんとか続けて欲しいものだなあ。