「スカイ・クロラ」を見る

 ようやっと見てきましたよ、「スカイ・クロラ」。原作読んでから見た方がいいかな、などと思いましたが、結局先に映画の方を。
 ごく淡々と、陰鬱でさえあるムードに作ってあるので「嵐のような感動」てのではないのですが、じわじわと楽しみました。
 色々細かい点で言いたいことはあるのだけど、大きなポイントとしては

  • やっぱり「萩尾望都のあの話」でした。というか、同じSF設定を、裏返して別の側面を見せたというか。同じメロディにより陰鬱にアレンジしてみせた、というか。「永遠に続く戦争」という舞台を用意したことがそれなんだと思うけども。なるほどこの設定と料理の仕方は、原作森博嗣氏の萩尾望都作品へのオマージュでもありましょう。
  • 色んな場面での室内インテリアがアール・ヌーヴォーだってどうして誰も教えてくれないのよ! あたくしは娼館のベッド見てちょっと飛びましたよ。なんじゃあれは。ガレかマジョレルあたりに見えたけど。他に「ゲストハウス」や、作戦で出た町のレストランとかでもガレあたりのランプが飾ってあったし。パンフによると、レストランのランプがガレであること(ちなみに隣にあった水墨画もどっかで見たようなとおもったら、宮本武蔵の絵なんだそうな)は書いてあったけども、他の場面の内装についてはほとんど書かれていない。娼館と「ゲストハウス」に伊万里の壺が置かれてることくらい。

 あのベッドもランプも、ほかの何やらアール・ヌーヴォーらしき家具調度類も、ガレあたりの工芸品をモデルにしてるんじゃないかと思うのだが、どこにも情報が見あたらない。見たような気がするのに元ネタがわからないのってすごく落ち着かない!
 てか、あのシーンの背景画はどっかで確認できないのか! 画集売ってたりしないのか!! じたじた!

 その他、こまかいこと。

  • 菊地凛子の声は、序盤かなり辛い。舌っ足らずに聞こえるからか。感情を表に出さない台詞だと、本来ここらはもっと硬質にやるとこじゃないのかな、と違和感を憶える。終盤にはかなり改善して気にならなくなったが、あれは感情の起伏が出ているシーンになったからか、ずっと聞いているうちに私の耳が馴染んでしまったのか。それとも菊地凛子自身がアフレコに慣れてきたということか。(でもシーン順に録るとは限らないよね?;)加瀬亮も、後半の長台詞あたりは平板過ぎて辛かったりした。あれは演出なのかも知れないけど、もうちょっと色々やりようがあるような気が。一方、谷原章介は思いの外良かったと思いますよ。この人の声って、耳に心地よい感じなんですわ。タラシで軽い男、というキャラクターにも合ってたし。
  • バセットハウンドはやっぱり出るんだなあ、と。足短いし。てちてち走り回るし。しかしパンフによると、今回の彼/彼女は名無しなんだそうな。また、三月兎基地では猫も出てきたけど、ほとんど動かないのが残念。
  • キルドレは「子供」と言いながら――台詞でも自分でそう言ってるけど――土岐野あたりはあんまり子供に見えない外見だな、と思うことしきり。まあ十六・七で既にでかく育っちゃった男の子、てのもいますが。
  • 派手なドッグファイトは迫力があるのだが、どっちがやられたのか咄嗟に分からないところが辛い;(最後の一対一の戦闘シーンでさえそうだった) これは私に飛行機マニヤ属性が無い故か。他の人々はみんな分かるのか。
  • 基地の周辺に何もないのが気になる。バイクで出掛ける範囲内に町もあるみたいだけど、一般人すれ違うような場所ってドライブインしか出てこないし。基地の住人は衣食住の生活物資をどうやって入手してるのだ。基本配給とか通販か。