「インクレディブル・ハルク」を見る

 これも面白いよ、と評判を聞いていたので、まだ掛かっているうちに見ておく。
 ほんとは「スカイ・クロラ」を見ようと思って行ったのだが、こっちの方が時間帯が合っていたもので。しかしなかなか「スカイ・クロラ」を見られないなあ。私と映画館の間に、何ぞ確率を操る障壁でもあるのかしら。
 で、「ハルク」。
 わはははは、色々ハイテクの設定があっても、結局戦闘は筋肉のぶつかり合うどつきあいだというあたり。んで、巨体になっても俊敏だったり、美女を守ろうとしたりするあたりは「キングコング」なのだった。ああ古き良き米国の伝統っ!
 今回は、変身前のブルース君がエドワード・ノートンなので、細身で物静かな男が変貌する、というギャップをより一層楽しませるものかと。で、変身すると「何も憶えていない」とか言いつつも、実は恋人のことは分かっている――か、制御を憶えたことで分かるようになっていく、のか?――あたり。これはジキルとハイドのような二重人格なのかもしれず、多重人格症の治療の過程にあるときく人格の認識→統合の過程なのかも。あるいは「怪物」である「ハルク」から見たら「はやく人間になりたーい」というドラマが生まれそうでもある。
 怪物としてのアクションもだけど、風景とかちょっとした映像もなかなか楽しかったですよ。まず冒頭、ブラジルの山肌にどこまでも低層住宅が折り重なるように続く街並み(リオデジャネイロなんだそうな)には、凄いとこがあるもんだ、と感心することしきり。あれ見せてくれただけでもちょっと映画館で見て良かったと思いましたしね。後にその狭く入り組んだ町並みが、ブルース君と追っ手の米軍兵士達とのおっかけっこの舞台になるわけだけど。
 しかし、この後の米国のパートで登場するヒロインのリブ・タイラーは美人なんだが、細胞生物学の博士、というにはちょっと微妙な感じだった。ピザ屋に現れたところなんか、割と抜けた娘のような印象だし。それと寝室のシーンなどで、胴が太いなあ、とか余計なところに目が行ってしまったりする。――この方、「ロード・オブ・ザ・リング」ではアルウェン姫をやってて、そっちではもっときりっと高貴な感じを出してたんだけどなあ。どうもこの映画では、賢さ、気丈さよりもか弱くお馬鹿な演出に傾いてるようでいただけませんよ。あんな丈夫そうな体格で、か弱いヒロイン、ってったって;
 ところで、どうもこの展開だと、続編がありそうな話の造りではある。あのひとやあのひともまだ死んでないみたいだし。変身能力についても色々展開があるみたいだし。シリーズ化というのも楽しみではあるけど、続編って大風呂敷を広げすぎたり物語の軸がぶれたりして失敗する例が多いようなので、心配もあるのだった。――ラストシーンは他シリーズとのコラボなんだそうだが。いいのか、要るのかそれは?という不安も。