東京国立博物館平成館にて特別展「対決−巨匠たちの日本美術」を見る。

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 色々良い物が来ていると評判だったので、連休最終日にいそいそと行ってきたのだった。面白いけどなんで対決企画にしたかなあ、と思っていたけど、要は日本東洋美術研究誌『國華』の創刊120周年記念企画なのだそうな。展示品のところどころに「」
 で、対決として取り上げられた巨匠は以下の12組。

  • 運慶 vs 快慶  —人に象る仏の性—
  • 雪舟 vs 雪村  —画趣に秘める禅境—
  • 永徳 vs 等伯  —墨と彩の気韻生動—
  • 長次郎 vs 光悦  —楽碗に競う わび数寄の美—
  • 宗達 vs 光琳  —画想無碍・画才無尽—
  • 仁清 vs 乾山  —彩雅陶から書画陶へ—
  • 円空 vs 木喰  —仏縁世に満ちみつ—
  • 大雅 vs 蕪村  —詩は画の心・画は句の姿—
  • 若冲 vs 蕭白  —画人・画狂・画仙・画魔—
  • 応挙 vs 芦雪  —写生の静・奇想の動—
  • 歌麿 vs 写楽  —憂き世を浮き世に化粧して—
  • 鉄斎 vs 大観  —温故創新の双巨峰—

 色々価値の高いモノを集めておられて、対決抜きで見ても十分楽しい企画なのだが、個人的には特に「応挙vs芦雪」と「若冲vs蕭白」ですな。
 「応挙vs芦雪」なんか、コーナーに入った途端あたくしは笑いが止まりませんでしたよ。だって、入ってすぐのとこに「猛虎図屏風」と「虎図襖」並べてあるんだもんよ。
 そこは笑うところか、と言われるかもしれんが、私的には笑うところなんです。だって、あの「実体見たことありません」な状態で描かれた虎どものお茶目なことってば! 応挙の「猛虎図屏風」だと、目のつり上がり具合とか口の裂け具合とかはおどろおどろしいのだけども、表情やらしぐさやらはやっぱりなんだかお茶目。端の方の尻尾を真っ直ぐ立ててるやつなんか、どう見ても得意気な猫。芦雪はというと、負けず劣らず、というか可愛らしさをより追求したような形でむちむち手足を描いてるし。いや、応挙でも金刀比羅宮にある「遊虎図」ではもっとむちむちふかふかしてたし、後に更に愛らしさへシフトしたのか。ああもう、巨匠達ほんとに猫好き(猫も好き、か。仔犬の次くらいか。)なんですね、なんか画面に横溢してますよ、この萌え絵師弟がっ!! しかし実は芦雪の虎図襖の裏は猫の図なんだそうな。見せてよそういうものがあるんなら!!せめて参考図としてコピー展示するぐらいは!!
 「若冲vs蕭白」はというと、金屏風の「仙人掌群鶏図襖」が流石の迫力でございましたな。例によって豪奢な尾羽を立てて見栄を切る雄鳥を両側の中央に据えております。しかしこれに対して蕭白はというと、極彩色で描かれた「群仙図屏風」も面白いのだけども、それより墨絵の「唐獅子図」の迫力でしょう。なんというか、きっちり計算して洗練した形で「迫力」を演出する若冲に対して、蕭白の勢いを見せる迫力、とでも言うか。「唐獅子図」元々はご本尊だかの両側の板戸の表に描かれたとかで、普通の襖や屏風より大きく感じるのだが、表装のせいであろうか、あるいは画面からはみ出しそうな迫力のせいであろうか。
 ともあれ閉館時間まで貪欲に見て歩き回って、へろへろになってしまったことでありますよ。
 最後に、ショップにガチャガチャが置かれていたので何かと思ったら、対決した巨匠達を山口晃氏が描いた像(各コーナー入り口に下げられた垂れ幕にも小さく描かれていた)を缶バッヂにして売ってるというのだった。12組24人を、それぞれ8人ずつ別のガチャガチャ機に仕込んであるというので、応挙あたり出ないか、と狙ってやってみたらなんと一発で出たのだった。
山口晃氏による応挙像
 これは弟子による応挙像を元に描いておられるのだろうけども、仔犬を連れてるあたりが、わかってますなあ、と言う感じ。ほくほく。
 ――まあ、仔犬連れてなかったら、ただのむちむち小太りのおっさんかもしれませんが;