「イースタン・プロミス」を見る

 急遽設定された映画観覧の集いということで、昼過ぎの上映を見に行く。大半の他の参加者は朝の1回目上映を見たらしいのだが、距離から言っても休日のスケジュールから言ってもそれはそれは大変なので*1、じゃあ合流できたら合流するちうことで〜という分離企画なのだった。
 で、映画。
 や、実はクローネンバーグ初体験なんでした。
 思ったほどどろどろでろでろではなかったですが(それなりに暗く血腥くはあるけども、血糊そのものは控えめ)あれはおそらく「クローネンバーグ映画」として評価されてる本流からは外れたところなんだろな。
 語り手として置かれているのはナオミ・ワッツ演じるところの大病院勤務の助産婦なんだけども、宣伝でも「ヴィゴ・モーテンセンが」としきりに書いているように、どう見ても主人公はヴィゴ・モーテンセン演じるところのロシアン・マフィアの「ただの運転手」もしくは「葬儀屋」。やらされてることは確かに下っ端らしいんだけども、でもどう見ても下っ端らしくない立ち居振る舞いですわなあ。そもそも身なりがいいし*2(運転手にもこのくらいのものを着せとくんかな、あの「法の泥棒」なる組織は?;ボスは割とふつうのおっさんぽい力の抜けた恰好なのに)ボスにもボスの息子にも全然動じてないし、媚びなくて背筋延びてる感じだし。叩き上げの悪ってこんなもんか、と思ってたらやっぱりというか。
 まあ売春婦に掛けてた言葉や、その後のヴァンサン・カッセル@ボスのドラ息子(いいけど全然ロシア系っぽくないような、血が混じってるという設定か?)の話からしてそうなんだろな、と思ってたけども、明かされてから考えると、あの組織はそこまでさせるんか、いろいろやばくはないんか、と思うとこもあり。
 しかし、「良い話」にまとめてはあるけども、これをラヴ・ストーリーとして描く必要があったんかどうか。もしそう描くならナオミ・ワッツの比重を増して彼女に寄った視点にすべきだったろうし、でもそうしたら相当に陳腐になりそうな気もするし。
 まあ、マフィアの金でできてるにしてもあのロシア料理レストランの場面はいずれも控えめな華やかさで美しく、お料理もエレガントで美味しそうだったし、序盤の、店主が女の子からバイオリン借りて弾いてみせるシーンなんてのはまことに心温まる良い場面なんだが(それだけに後で実はこの人が、という要素もあり)、ドラマ全体として納得しかねるところもあり。
 最後の結末が、一気に数ヶ月後に飛んで間は察しろ、という造りにしてあったせいかな。彼一人しか出てこないし。途中の、半裸で刺青見せながらマフィアの大物達の審判を仰ぐ場面とか、その後の全裸の格闘シーンとか(最近はちゃんとモロ出しで見せるんだなあ。ま、緩やかにモーフィング入ってたらしいですが)おおお凄い、痛い痛い痛い、とか思いましたが、考えてみればそれがその後の話の流れに繋がってない辺りが妙という気も。(だってあれで生き残られちゃったら、マフィア側としてはかなりやばいんじゃ?)
 まあ、それぞれの場面としてはかなり愉しんだので良しとしようかと。
 ところで彼の「前科」は、どこまで本当だったんでしょうね。考えてみれば「懲罰房入り」とか言ってたのは、他の囚人に顔を見られていないことの言い訳として使われていたのかも。
 で、続編ができるんかな、これは?

*1:上映に間に合うように到着するのもさることながら、その後週末の日比谷〜銀座方面でまとまった人数でお昼を食べられるところを捜すなんざ。簡単にお引き受けはできませんぞ;

*2:某所によるとアルマーニらしい。そうだったのか。シャツがシルクらしいくらいは分かったんですが、アルマーニを着るマフィアの下っ端;