東京都庭園美術館にて「世界に誇る和製テーブルウェア オールドノリタケと懐かしの洋食器」展を見る

 陶器やら塗り物やら宝飾品やらの手工芸品の展示は見とこうと思っているのである。「オールドノリタケ」なる呼称は米国あたりのコレクターがつけたらしいのだが、対象がきっちり規定されている用語ではなく、「ノリタケ」ブランドが確立する前の日本陶器時代の森村ブランドのもの(だから正しくは「プレノリタケ」か)とか、その周辺の明治〜昭和初期の和製洋食器全般に関する展示であった。一般に「オールドノリタケ」で知られるのはアールデコあたりのものが主流らしいのだが、それ以前の和製アールヌーヴォー調のもの*1とか、もっと前にパリ万博やウィーン万博に出展した久谷あたりの流れを汲むものなども並んでいるのだった。
 元々、高級とはいえちゃんと使うための陶磁器なので、ものすごい迫力のある芸術品、というものではないのだが、確かにちょっと目を惹く細工の物がならんでおりましたぞ。まあ、陶器とはいえ、どう考えても普段遣いではないですわなあ。金線銀線やラスター彩(玉虫色になるやつね)、焼き物なのに漆器かと思うような色合いや絵付けのものもあったりする。で、デザインとしては今売られていても全然おかしくないくらい、いずれも古びた感じはしないのだった。驚くほどポップだったりする。
 どうしてこういうデザインをお蔵入りにしちゃったかなあ、などと思うことしきり。(あるいは贅沢に作りすぎて、その後の量産はきかなかったとかか?;)もしも同じようなのを、今ちゃんと復刻版で作って売り出したら、それなりに売れると思うのだけど。
 それと、展示品はだいたい百数十年から七、八十年くらい経ってる古い物ばかりのはずなのだが、いずれも大変に保存状態がいいのだった。新品みたいにぴかぴか。そういう状態のいいコレクションから提供を受けてるのだろうが(「守谷コレクション」というのがそれか)その他の展示品でも、ひびや汚れ、かすれのあるものの方がむしろ稀なくらい。
 しかし、こういうものを普通に茶を飲むのに使ったり、マントルピースに据えて置いたり、贈答に使ったりしていたお家もあるわけだよなあ、と思うと、ああお金持ちって、とくらくらするところはある。いや、今もそういう位置づけの新作は作られて売られてるわけではあるけどね……三越や大丸の上の方の階とかで。
 一通り眺めてから図録を買って、ちょろっとお庭も通り抜けたりして、ついでにカフェで軽く食べてから帰る。しかし、「お茶漬け」というふれこみで出されている椀物が、小ぶりのご飯茶碗で出てくるとは思わなんだ。構えはカフェ兼酒処だから軽いつまみくらいを意図したメニューにしても、コストパフォーマンス悪いことよ。まあ美味しかったから勘弁しといてやるっ。

*1:杉浦非水のデザインカット集なんてのもあった