「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」を見る

 見てきましてよ、「モンゴル」の前に予告を見て楽しみにしていた「それはそれは酷そうな」映画。
 いやまあ。予想通り酷い話だったんですけども。酷いが故に妙に痛快というか。
 序盤からBGM代わりに不協和音が流れてたりするし、盛り上がるはずのところで厭な通奏低音が流れてたりするし。なんか厭なこと起こるんだろなー、という予感を引きずりながら話は進む。
 筋だけ見ると、立身出世成功譚の筈なんですけどね。子を愛し同僚に信頼され事業を成功させ地域に富を齎し。で、「他人への悪意を積み上げてる」とか言い、気に入らないとなると容赦なく罵倒しねちっこくいびり倒すにも関わらず、この主人公のプレインビューなる男はなんだか愛嬌があって魅力的なんですな。それを見越してか、やられる側はいかにも「小物です〜」「根が間抜けな世間知らずです〜」て様相になってるし。
 さんざんな罵倒にも関わらず、ずっと見てる側からすると「そんなわけないだろ?」という部分も多かったりする。特に息子に対しては。こいつもしやツンデレかっ、などと思いながら見ていたことでありましたよ。
 それでなんであの結末になるか、というと、やっぱり息子のことは深いとこに食い込んでいて、喪失感のあまりに荒れたんだろなあ、という気がします。
 まあこれも、あんまりにも単純に割り切りすぎた見方、とは思いますけどね。奴のことはずっと気に入らないと思い続けてきたわけだし。(確かにずっとすごい違和感のあるキャラクターでしたよ、あの人は。主人公が健康的で愛嬌のある人物に見えたのは、もしかすると彼との対比に拠るのかもしれんです)
 ところで、見終わっていくつか残る謎があるような。というのは、サンデー家のことで。例えば、

  • 「ポール」なる人物は実在したのか?(原作には実在するようだけど、敢えて同じ役者に二役をやらせているこの映画では? 更にポールの話に登場する「叔父」というのも?)
  • メアリーを殴っていたのは本当に「父」エイベルだったか? イーライが食卓でやつあたりするシーンを見るに、この親父にそんな暴力性や行動力があるようには思えない。
  • イーライがダニエルに「婚姻による義理の兄弟」とか言ってたのは? メアリーは妹だから義理の親子では? 単に「身内」くらいの意味かもしれないけど(英語のニュアンスとしてはどうなんでしょ?)上記のメアリーの「お祈りしないと父さんが殴る」という話と合わせると、ちょっと気になる。

 とはいえ、私はあの爆発と櫓の火柱を見せてくれただけで(更にその後の爆風での消火とかも)この映画はたいしたもんだと思いましたけどね。や、3時間近く見るだけのものではございますよ。