「アメリカン・ギャングスター」を観る

 某所で大変評判が良いようなので見に行ってきたのだった。
 おお確かにかっこええのう、ほうほう、などと思いながら眺めたことであった。
 デンゼル・ワシントン演じる、ヤクの密売を基盤とするニューヨークの組織のボスと、ラッセル・クロウ演じる、ニュージャージーの無頼の刑事。それぞれを交互に描いていた物語が、やがて交わっていくことになる。
 デンゼル・ワシントンの役所は貧しい黒人家庭で苦労して育ち、後にハーレムの大物に可愛がられてマフィアギャングとしての生き方を学んだ、という背景の人物だが、身なりもいいし(ほとんどのシーンできっちりと仕立ての良さそうなシャツやジャケットを着てる)立ち居振舞いなどはどう見ても刑事達より穏やかで上品そうだ。(「ミス・プエルトリコ」や煉瓦の産地である英国の地名を知らなかったりと、学はないらしいのだが、無知を曝しても全然まぬけに見えない)とはいえ、自分を馬鹿にし取引を蔑ろにした相手、浮かれたりヘマをやらかしたりした身内などには、静かにブチ切れてぱんぱんっと始末をつけてしまうあたり。
 対するラッセル・クロウの刑事は、馬鹿正直に裏金を届け出てハブにされるわ、相棒はヤクに溺れて野垂れ死ぬわ、離婚調停で息子の親権は取り損ねるわ(というか最終的には自分から諦める)、裁判の最中に別室で女性弁護士とお楽しみだわ、ほぼ常に汗だくでよれよれして、情けないみっともないところ満載なのだが。それでも、決して美男子ではない顔つきを歪めて堪え忍んでみせるあたりはなかなか。
 困難の果てに捜査が進み、同時にアメリカがベトナム戦争終結へと向かい、二人がようやく顔を合わせて、というあたりで終盤もう一つのミッションがはじまる。
 や、その爽快なことってば。私は見ながらずっと笑ってましたよ。もっとやれー、もっと挙げろー、て。(しかし、トルーポはまことにまことに惜しかったね。わんこの敵は討って欲しかったですよ)
 それはそうと、あのラストのワンカットは一体何だったのだろう。サービスかいな、とは思うけど、本編とは繋がりがない映像に見えたが。

 ところでモデルとなった黒人の元麻薬王は今もご健在とのことだけど、一方の元刑事(後に弁護士に転身、とあったが)はどうなったんでしょうね。原作本に出ているかしら。

アメリカン・ギャングスター (ハヤカワ文庫NF)

アメリカン・ギャングスター (ハヤカワ文庫NF)