ワールドコン3日目・12:00〜14:00

 ちょろっと「男の子はなぜ飛行機をつくるのか」を覗いた後(「メーヴェ」の素材の選択の話などをしていた)、天野喜孝×ボブ・エグルトン対談が気になりつつも「サイバーパンクの部屋」へ行ってみる。取り上げられていた話題が多いのでそれぞれ箇条書きにしてみると、以下のような感じ。

  • とりにてぃ氏から、ギブスンの小説に出てきた、幻覚を見せる(だか、現実感覚を狂わせる、だかだったか。ちょっと不正確)ために一服盛られた薬剤の名前が、自分が鬱病治療のために実際に処方されたのと同じだったということに気付いた、という体験。このように現実の日常にサイバーな体験が現れるなら、鬱病になるのも悪くない(や、病気自体はそれはそれで大変らしいですが)といった感想。
  • 英米では「サイバーパンク」と呼ばれる動きはもうさほど聞こえてこないそうなのだが、日本ではまだまだ「サイバーパンクを遊ぶ」動きがある。既に「サイバー」という言葉は、クラブシーンでながすビデオクリップなどにあるように(ここで紹介されたのは国内のクラブ・シーンのサイトCYBER JAPAN)、ファッションやアートの一ジャンルという位置づけになっている。
  • 他の企画に出演のためヴァーチャル出演という形になった小谷真理氏のご挨拶用映像から、2ちゃんを通じてSFファン達が渋谷などで行ったマトリックスごっこ「わらわらばーん!*1」の紹介など。おばかだ。おばかだがおばかを徹底しているので、大変愉しそうでよろしい。同様の活動はその後も続いているのだが、近年では下火になってきて(まあ「マトリックス」公開から何年も経ちましたからね)SF大会会場でもスミスの数が減っているのがちょっと寂しい、とのこと。このとき会場には最前列にスミス氏が一人いたのだが、彼のコスプレは年ごとに色々改良・変更を加えて現在のスタイルは四代目だか、とのこと。
  • 兵馬俑ポストカードの紹介。これは何年か前に日本国内で行われた兵馬俑展で販売されていたもので、本物の兵馬俑の写真なのだが、ここで何故サイバーパンク兵馬俑か、というのは見れば分かる。無駄にかっこいい。近代的なビルの前に立つ兵馬俑、とか、エスカレーターに乗っている兵馬俑、とか、満月を背に剣を掲げるポーズの兵馬俑、丸窓の障子の前に立つ逆光の剣を掲げる兵馬俑……妙にスタイリッシュなんである。会場からも「これ欲しいわ」という声が。明らかに生きてない容貌なのだが、なんだか人間くさく見えるし。そのあたりの無機質/ヒトがましさの隣り合う当たりは、なるほど確かにサイバーと言えなくもない。――で、四千年前の古代美術も取り込んでしまうサイバー、といったまとめだったような。
  • 菊池誠氏から、現実に実現されたサイバー・テクノロジの例として、神戸大学大学院工学研究科の塚本昌彦氏(これは大阪大のサイト内の研究紹介頁)ウェアラブル・コンピューターが紹介された。(ちなみに神戸大のサイト内の頁はこちら)塚本氏は、まだ埋め込み式でこそないが、片目に液晶(あるいは投影式かな?)画面のついたバイザー(正確にはHMD:Head Mount Display だそうな)をつけた、外付け式でのサイバー生活を実施しているとのこと。コンピューター本体は小型のをウェストあたりに装着しているらしい。なんかこの写真を拝見すると非常にファッショナブルでかっこいいのだが、別に遊んでいるわけではなくてこれが彼のリサーチなのだそうな。(まあ格好良くも見えるウェアラブルコンピューター、というのも研究目標の一つかも。と、これは私の私見)しかし現状では、片目で表示画面を見続けるのは、大変に疲れるとのこと。こういうのは身体に掛かる負荷も含めて検討しなきゃいかんのでしょうね。
  • 隠れたサイバーパンクな名作として、韓国映画ナチュラル・シティ」を紹介。ストーリーは「ブレードランナー」、アクションは「攻殻機動隊」、演出は「マトリックス」と言う感じのもの。ブレードランナーのように「雨の街中で、屋台の麺をすする」というシーンも出てくるらしい。しかもラブ・ストーリーで、展開としては「私の頭の中の消しゴム」な泣かせが入るのだそうだ。

 ――ううむ、一度ちゃんと見なければなるまいか。日本でも公開されたが、SFファンには全く評判にならず、もっぱら韓流映画ファンが見に行ったとのことですが。

*1:「マトリックス リローデッド」の1シーンにあった、ネオにエージェント・スミスがわらわらと群がって抑えつけるのを、ばーん! と内側から弾き飛ばす、というシーンを「肉体的な努力で」実現してみせるもの。その場面の連続写真を見せてくれた。同様のレポート・画像はこのへん>http://s00516.pussycat.jp/off.html に。