ワールドコン2日目・14:00〜16:00

 「ヲタクエクスプレス 東京発モスクワ行き」へ。まずロシアでのSF/ファンタシィ(彼の地には古典的幻想文学もひっくるめての「ファンタスチカ」という呼称があるそうな)の文化的な経緯と、最近の日本オタク文化への興味関心、また日本のマニヤ/オタクからのロシア文化への興味関心関わりについて。(日本からロシアへ、の主力は軍事マニヤらしい)
 予定していたメインゲストが呼べなくなって企画変更、という話もあったのだが、SF大会レベルではまだ話していない話題も多く披瀝されて、回覧資料書籍などもたくさん出されて、参加者からの質問に答えながら、という形でかなり賑わっていた。
 もともとソヴィエトの体制下で検閲の危険をかいくぐるために、草の根パソコン通信ネットを利用して著作物ファイルをネット上に流していたのが、現在ではインターネットに環境を移しつつも続いていて、貪欲に欧米諸国をはじめ日本の画像・著作データをあさっているとか。その顕著な例が2ch.ruなど。(このへんインターネット技術の発展がエロ画像を見たいという欲望に後押しされて発展されたのと同じ事が起こっている)お陰で日本語のオタク/腐女子用語がそのままの発音でロシアに移植されている、とか(オタク、ヤオイ、ショタ、ロリ、ツンデレ等。ちなみに「ヘンタイ」というと萌え絵のエロ画/アニメのことだそうな)、時代を追う毎にSF/ファンタスチカ系等の雑誌にジャパニメーション/アメコミ/バンド・デシネ系統の絵柄が増えて行った過程を雑誌の変遷に見るといった内容であった。近年では東大へのロシア人留学生でも、日本の漫画やアニメを研究対象にしたいと希望してくる学生さんがいるということで、沼野充義先生はロシア人学生に「ツンデレとは何ですか」と聞かれて困惑したとのこと。(まあ困るかなあ、でもあれは古典的な概念に新しく付けられた名称だろう、という話から、ロシア人は実は結構ツンデレではなかろうか、オフィシャルはツンでプライベートはデレで、という話になったり;)
 ただし特筆すべき事には、ジャパニメーションやハリウッド映画の影響を受けて、傾向としてライトノベル化してきているとはいえ、元々文学的に高度な著作をエンタテイメントとして楽しむという下地があるので、現在の比較的「軽い読み物」であっても文学性は非常に高い。このあたりは日本のライトノベル化した状況とは大きく違うところではないか――今後互いにどう変化して行くかはおくとしても――という部分も紹介して終わったのだった。
 私は数年前の京フェスで、非英語圏のSFに関する企画をやった時に重複する内容も聞いていたのだけども、ロシアをはじめとする東欧圏の出版物状況などについては知られていないらしく、会場の聴衆からもかなり活発な質問が出て、パネルディスカッションというよりも公開質問会のような状況であった。