山種美術館にて『開館40周年記念展 山種コレクション名品選』を見る

 かねて山種美術館の収蔵品は見てみたいと思っていたのだった。今回の展示は最終日にようやく見に行くことができたのだった。
 や、良い物があるとは聞いていたけど、期待以上によかったですよ。個人のコレクションが元と言いながら、いずれも結構な物が並んでいて、随分眼福でした。抱一とか(今回の展示にはなかったけど)、其一とか俵屋宗達とかもあるとは知りませんでしたよ。(調べて行けよ;)まあメインは明治・大正以降の、もうちょっと新しい物らしいんですが。
 ポスターにもなっている速水御舟『炎舞』(重要文化財)は、一番奥の部屋の奥の壁に、暗い中でスポットライトに浮かぶように置いてあって、さすがに人の目を引いてましたな。ここの両側の壁には大きな屏風絵が置かれていて、サイズから言えばこの「炎舞」は比較的小ぶりにみえるはずなのだけども、羽虫と炎が浮き上がって迫ってくるような。
 この前の部屋に置かれていた作品だけを見ると、速水御舟と言う方は繊細で優しげな植物画なぞ何枚も描かれてる方なんだけども、この『炎舞』の迫力には画家を一作二作で判断しちゃいけないね、と思うことしきり。また、『炎舞』と同じ部屋の右側の壁には金地の屏風絵「翠苔緑芝」が置かれていたのだけども、これがまた違った、大らかというかほのぼのユーモラスなタッチで。芝生に紫陽花と棕櫚か何か、南洋産らしき庭木が描かれている両側に、白兎二羽と黒猫一匹が配されているのだけど、これがなんともお茶目。屏風絵というよりは絵本の一頁のようであることでしたよ。――これは、あれかな。写生という方向で一度技能を身につけた人が、色々と表現を模索してそれぞれに到達点を得た、ということなのかな。
 そういうわけで、展示点数は少な目ながらもかなり堪能したのだが、しかしお目当ての一つだった竹内栖鳳『班猫』は、前半の展示だったので見られなかったのだった。(だからあらかじめ調べておけよと;)すっかり行き場のない情熱が空回りした挙げ句、ミュージアムショップで班猫グッズを買ってしまう。絵はがきとか、クリアファイルとか。
 『班猫』は緑のお目目が美しいですのう。重要文化財だって。いつかまた収蔵品展の折に、実物にお目に掛かりたいものです。