日本民藝館にて特別展 日本の幟旗(のぼりばた)を見る

 日本民藝館というのは駒場にあるのだが、月に2回だけ旧柳宗悦邸の公開があるというので行ってみたのだった。
 旧柳宗悦邸の方は、色々と心地よく気を配られた普通の古民家だったのだが(個人的には非常に好きなんだけどね)「日本の幟旗」の方はちょっとすごかったですぞ。最初、本館の構造に気が付かずに、玄関の吹き抜け階段周りに展示された暖簾とか、その脇の部屋の漆器とか陶器とか眺めて、うむ、こういうものは好きだけど、幟旗展ってこんなもの? と思っていたら。
 奥に、講堂みたいな大展示室があるんですな。天井の高い。で、その壁一面に幟旗が下がっている。これはいずれも江戸期のもので、合戦に使われたのではなくて、お節句用や神社への奉納用に豪農や豪商など富裕層、あるいは村単位などであつらえられたものだそうですが。
 幟旗ってくらいだから、長いんですよ。幅は反物サイズとしても、ものによっては体育館みたいな大展示室の天井際から下げても引きずるくらい。手ぬぐいの巨大版みたいな図案の染め物とか、相撲の巡業なんかで掲げてるような文字のもありましたが、なんか北斎展で見たのに似てるような鍾馗様(巨大な横顔を細長く切り取る斬新な構図も北斎っぽい)なんかもありましたぞ。これはどうも肉筆らしく見えたけど、展示品はいずれも作者不詳なんだそうで。いずれも実用品として持っていたところから集めてきたから、落款なども残ってないのが普通なんだとか。
 この手の絵柄の浮世絵展などは良く行くのだけども、これだけのサイズの物はなかなかないので、随分と迫力のあるものでございましたよ。なかなか侮りがたい展示でした。
 その後、他の収蔵品の(これは常設かな?)李朝漆器とかバーナード・リーチの陶器等々見て、閉館時間になったので名残惜しく退出したのだった。閉館時間でも、まだ外はかんかん照りだったのだが。
 しかしこんなことでもないと、駒場東大前駅なんてなかなか降りないのだ。そのせいもあったかもしれないが、帰り道ふと匂いに誘惑されて、道沿いのパン屋でパンと焼き菓子を購入してしまったことであった。