国立科学博物館にて「花 FLOWER 〜太古の花から青いバラまで〜」展を見る。

 大分前にチケットを買っておきながら、なかなか行けなかったのだった。呼び物のサントリー謹製遺伝子工学による「青い薔薇」がある、とか、いうので、終盤になって慌てて見に行ったのだった。
 ううむ。面白かったんだけども。
 なんだか生物学的な花の知識と(それも解剖学的、と、博物学的、とのそれぞれの方向で)、展示品のヴィジュアルとしての美しさと、日本の古典的な文化の中での花、というのが散漫になっている感じ。それぞれの展示はそれなりに面白いんだけどなあ。でも特に植物についての知識や興味関心のない人には前半の生物学的展示がつらかろうし、美観や文化としての花の取り上げ方としては、ポイントになるトピックだけを摘み上げた感じなので印象としては浅かったかも。
 で、呼び物の「青い薔薇」は、まだまだ実物を見ると、どっちかというと「淡い青紫」なのね。あれなら映像と模型だけで見せたヒマラヤの青いケシの方がインパクト大かと。さすがに、いまだに鮮やかな空色の薔薇なんてのはできないんですなあ。それともそのあたりは、遺伝子よりも育成法の問題になるのか。
 まあ、インパクトのある標本やら模型やらは、実はその昔の「花と緑の博覧会」で出品された物を集めてきたらしいのだけど、それはそれで、こういう機会に見られるのは良かったかも。ラフレシアの樹脂包埋標本とかなんて、なかなかみられるもんじゃございません。
 ただ、どっちかというとこの展示の評価を下げているのは、会場に飾られた生花のいくつかが、枯れたり萎れてたりしたことかな。かなり頑張ってるんだろうとは思うけど、生の花を出そうと思ったら、バックアップの交代要員とメンテナンスがそれなりに要るってことだろうね。あと、展示パネルの花の香りをケース内に噴出していて嗅ぐことができる、という展示があって面白かったんだけども、これもかなりの展示ケースでは、明らかに花じゃない黴か茸かなんかの匂いがしていたし。こんな香りだっけ、と一瞬思ったけど、すぐ、ああこりゃ、メンテナンス行き届かなくて「かもされた」な、と。
 だからね、生物とか湿気の強い物とか、ほんとに展示難しいんすよ。それなりに手間暇かけてやらないとね。せっかく科博で気合い入れてやるなら、そのあたりも気を付けて欲しかったな、と思うことしきり。
 でも生け花展示ブースにあれだけ協力をいただけるなら(この日は草月流の巨大アレンジメント――てかオブジェだな既に――が置かれていた)他のところだって協賛・協力やらボランティアやらを募ることはできたと思うんだけどね。
 楽しみながらもこの散漫さに今ひとつ乗り切れず、図録は買わずに帰ったのだった。まあこういうものは印刷物で見直す物じゃないのかも。