SFセミナーに行く

 と言っても、実は滞在時間30分強
 前日からの余波で体調が思わしくなく、昼過ぎまで様子見をした挙げ句、いや、やはり異形の企画は聞くべきであろう、と思い立って出掛けたのだった。
 しかして到着したのは3時半前。既に異形コレクション関連対談は半ばを過ぎた頃合いであるし、何より受け付けに人もいないのだった。
 どどどーしよー、間抜けだ、と思っていたら、ロビーで立ち話をしているスタッフの中に久しく会っていなかった旧知の顔を見つける。恐縮しながら「受付って……」と聞いてみたところ、「もう撤収しちゃったんです。だからどうぞ」とのことっ!
 うわあいラッキー、と、喜びつつも恐縮しつつ、こそこそ会場に入る。あ、合宿は出られませんので、とお断りして最後列近くに席を占め、井上雅彦牧野修平山夢明、北原尚彦の四氏と司会・日下三蔵氏による対談を、後半のみ聴講。以下、聞けたところだけ、かいつまんで(括弧内敬称略)。
聞き書きを記憶で書いてますので曖昧だったりずれてたりする点もありますが、ご容赦下さい。もしも誤解・誤記などお気づきの点がありましたら、お知らせいただけると大変ありがたく思います。

  • お題への対応:(出す側から、井上)編集側から提示する以外にも、三題話とか、自分で「題」の括りを作って書いている人は結構いるのではないか、(牧野)できるだけ他の人の思い付かない、かぶらなそうな話を考えている。縛りはあったほうがいい。(平山)裏道を考えて行く。一番苦しい作業かも、(北原)ヴィクトリア朝物という縛りもあるし、依頼があった場合には、自分に期待されているのはこういう路線か、というのも考えて、関連資料をあたりながら良さそうなエピソードを探す。
  • 枚数は:(井上)元々30枚前後、40枚までとかで依頼していたが、長くなる人も出ている。一番長いのでは100枚を超える物も。短い分には一枚のみでも良いのだが。最近は、ショートショートの発表の場がなくなってきているので、そういうものの発表の場という意味もあって。ただ近年は、角川ホラー大賞などの規定を見ても、「短編」という言葉の指す長さは随分広がってしまっていて、編集者の中には「30枚までのショートショート」(そりゃ普通の短編じゃ)などという人もいる。ちょっと教えていく必要も。
  • アンソロジーでの短編の配列と、各人の自作短編集について:(井上)異形収録作のうち、近年出た「燦めく闇」には比較的長い物だけを収録した。ショートショートは先に出した「綺霊」と「髏漫」に収録している。(司会から)ほとんど単行本収録されているかと思っていたら、まだかなり未収録作品が残っている。(二人で話し合い)「ふしぎ文学館」から出ないか?(牧野)「忌まわしい匣」は、並べた短編の他に、冒頭と終幕、中書き、という形で追加が入っているが?――おまけがついているとちょっと嬉しいですよね。作品だけでもいいけど、もうちょっと何か、と思って。(平山)「独白するユニバーサル横メルカトル」の並びはどうやって決めたか?――賞を取ったからってそうそう売れる物でもないし、とにかく手にとって読んで貰える形を考えようと。それでまず冒頭は、割と普通そうな「タロウは」とか童話と勘違いしてもらえそうな表現のを(それであれか?;とのどよめき)持ってきて、最後は、もうここまで読んできたら投げ捨てないで読んでくれるだろう、という一番ひどいのを。いやあの話(「ニコチンと少年」)は結構読んで分からなかった方も多いらしくて、田舎の母から「この話、ちゃんと終わってないよ? いいのここで終わって?」と訊かれた。いやこれでいいんだよ、と答えたが。近々また第二短編集が出るとか――光文社から「ミサイルマン」が出ます。ハードカバーで。この表題作「ミサイルマン」と収録の「托卵」は、小説の依頼が途切れた頃に、どこからの依頼もなく書いたもので、光文社と講談社の編集さんにお預けしていたんだけど、時代物の「托卵」は光文社に、「ミサイルマン」の方は講談社の担当さんが「これは変」と言って持っていってくれたものの、その後もなかなか掲載にならなかった。結局IN・POCKETに載ったんだけど、IN・POCKET編集長もよっぽど載せたくなかったらしく、編集後記の後に載ったという。時代物も書くんですね――いや、仕事は選びませんから。(北原)近日刊の短編集について――異形収録作を集めた物で、もう収録作は決まっており、配列を考えている。基本的にどれもヴィクトリアンを扱っているが、現代からヴィクトリア朝へ遡る、ということで冒頭は「血脈」(「時間怪談」収録)、最後は、現代の話だけどヴィクトリア朝時代の出来事が背景にある、というので「首吊少女亭」(「酒の夜語り」収録)を。
  • 今後各人が書きたい作品について:(北原)これまで正面から登場させたことはなかったけど、いずれホームズ物を。(平山)いつか書いてみたい、とずっと思っている作品が2つあって、一つは「冷たい方程式」、もう一つは「激突」。(牧野)いただく仕事を書いていくので、手一杯でございます。(と平伏。)
  • 今後のお題予定は:(井上)いくつも考えている物はある。今後は一巻限りの単発のお題ではなく、一つの題でシリーズということも考えている。「伯爵の血族」もそう。あと、考えている候補としては「男爵の実験」――フランケンシュタインもの。それとタイトル未定だが幽霊SF――「時間怪談」がSFの素材をホラーとして書く、ということをやったのの逆で、幽霊をSF的に描く、または幽霊を思弁的に捉える、といったものを考えている。
  • 質問より・今後公募はあるのか?:(井上)公募の企画もあって、これまで既に「讀本」も合わせて13人が掲載されているわけだが、この方達も青春の思い出に投稿した訳ではないだろうし、今後とも作品を発表できる環境を考えていきたい。

 SFセミナーだから絶対予定が押していると思っていたのだが、思いの外さくさくと進んできたらしく、ほぼ定時に終了。ちょこっとだけロビーで旧交を温めるも、ちょろっと寄るところもあったもので、私もさくさく退場する。
 ところでネット上で調べてみたら、平山夢明氏の第二短編集「ミサイルマン」は今月中に発売らしいのだが*1ネット書店や発売情報ページなどにはまだデータが出ていない。会場にあったビラを貰って来られたら良かったんだけどなー;

*1:6月20日発売になったらしい