嵐を避ける

 帰宅しようと職場を出たら、昼から強かった風に加えて雨も本降りになっていたのだった。数メートル歩くだけでも横殴りに叩き付けてくるのでずぶ濡れになってしまうのだった。
 普段使っている定期券の利用駅までは百数十メートルばかり。ここは暴風雨の中を進むのは諦め、最寄りの入り口から地下鉄に乗ってしまう。大人になるとこういうところは軟弱になるね。
 普段使わないルートからどうやっていつもの通勤路線に戻ろうか、と考えたが、結局いつも駅まで地下鉄路線を2本乗り継ぐことにする。ああなんかすごく馬鹿やってるかも。でもお陰で靴の中が乾いたままで移動はできたのだった。
 いつもの通勤路線に乗りながら、さて駅から自宅まではどうしよう、と考える。傘はあるけども差しててあまり役に立つという感じじゃないし。実際駅のホームでは、いつにも増して人がまばらに散っていて、どっちかというと、乗るべき電車が来るのとは反対側に偏った分布になっていたのだった。線路に近い端に立つと吹き付ける風雨の矢面になるので、誰もが近くにいる見知らぬ通りすがりを雨除け風除けに仕立てんと後ずさりしていたのだった。
 しかし自宅最寄り駅に降り立ってみると、幸いにして雨は小やみになっていた。やあ日頃の行いが出たというものか。それともこんなことで運を使い果たしたというものか。
 ところで、私があまり濡れずに帰れたのはいいけども、今通勤路近くに一個所、道路工事のため山の斜面を切り通し状に削っているところがあるのだった。確か春先になると、毎年1度や2度は滝壺のような大雨があると思うんだけど――大丈夫か、あの数メートルもの高さに露出した土壁は?;恐ろしく不安なんだけども;