「華麗なる一族」を見ていたら

 キムタク演じる主人公の義父の、西田敏行演じる元通産大臣の後ろに、胡蝶蘭が映っているのに気が付いた。
 政治家の執務室っぽくはあるけども。これ、ものっすごく変じゃーん! と気になって仕方なくなる。
 だってこの話、舞台は1960年代末じゃなかったっけ。当時も胡蝶蘭が全くなかったとはいわないけども、そこらの花屋で大枚叩けば鉢植えが買える、というものでは絶対に無かったはずだ。
 なんでって、洋ランの類はその昔、差し芽や株分けで増やすことができず、取れる種の数も少ないかったせいで、育成が特に難しい植物だったはずだ。一部好事家が手間暇かけてようやく花を咲かせるくらいで、だから価格も目の玉が飛び出るほどに高かったはず。高級生花として流通することもあったかもしれないが、株ごと売ってくれるなんてえ育成家がそんなにいたとは思えない。
 胡蝶蘭がちょっと豪華な贈答品として花屋に出回るようになったのは、1980年代にバイテク技術で組織培養による大量生産ができるようになってからのはず。
 ――なんてえ、細かいことを気にする方が、多分間違ってるんだろうなあ。でもこのドラマ、新幹線とか明らかに誰にでも分かりそうなところはともかくとして、細部の時代考証なんてのはきっぱりあきらめてるような気がする。どこぞで、キムタクだけ現代の恰好をしてる、というコメントを読んだのだが、確かに細かく服装の時代考証をしたら色々おかしいんじゃなかろうか。一見普通の背広姿に見えるかも知れないが、スーツのデザインというのも、時代によってすこしずつ変動があるものだし。60年代のビジネスマンだと、まだダブルが主流だったりしなかったかな? それにあの細身の仕立ては、80年代以降あたりに流行ったイタリア製スーツの流れじゃなかろうか、と思うのだが。
 まあ、キムタク演じる鉄平は過去に米国留学歴もあったりするということだし、舶来のセンスを身につけているので、普通の日本のサラリーマン諸氏とは違うファッションなのさ、という無理も、成立しなくはない。
 ないけどもね……
 多分今後も私は、このドラマの展開を愉しみつつも、画面の端々に「ぐわああ」と胸を掻きむしりそうになることであろう。細かくチェックしたら、食卓の皿にブロッコリとかパプリカが乗ってたりとかしないかな。
 いやむしろ、そのあたりを探して喜ぶのがこのドラマの愉しみ方の一つ、なのか……?;